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会議に関する数多くの書籍で、アジェンダの重要性が指摘されている。また、プロダクトマネージャーの多くも、会議を改善するカギはアジェンダにあると考えている。しかし本来、会議で重要なのはアジェンダではなく成果である。本稿では、会議をアジェンダ中心に展開することで、あたかも効率的な会議と感じてしまう「アジェンダ・シアター」の弊害を解説する。そして成果を中心とした会議を行うために必要な5つの準備を紹介する。

アジェンダが会議の中心になることの弊害

 大半の会議がひどいものだということは周知の事実である。行動科学の研究者と、会議の改善に取り組むスタートアップの創業者2人から成る本稿の執筆陣にとって、この点を指摘するのはお手のものだ。しかし、この問題を解決するのは簡単ではない。

 筆者らは、さまざまな業界や職種の従業員を対象に調査を行い、書籍や論文を読み、数え切れないほどのツールやテクニックを検討してきた。そこでわかったことが2つある。

 1つ目は、多くの専門家が良質な会議の主要因はアジェンダであると考えているらしい、ということだ。会議に関する書籍で、アジェンダの重要性が冒頭で謳われていないものを探すのは至難の業だ。また、筆者らが話を聞いたプロダクトマネージャーの大半は、会議を改善するカギはアジェンダにあると考えていた。

 2つ目は、アジェンダだけでは効果的な会議は行えないことを示唆する研究が、多数存在するということだ。

 詳細なアジェンダを用意すれば会議を改善できると思われがちだが、実際にはまったくの逆効果になるおそれがある。その理由は、多くの従業員が知らずしらずのうちに「アジェンダ・シアター」と呼ばれる慣習に陥っているためだ。あたかも効果的な会議であるかのように演出するアジェンダの作成に、多くの従業員が時間と労力を費やし、会議の進め方を改善しようとしていない。

 なぜ、このような非生産的な行動を起こしてしまうのか。会議のリーダーは、代わりに何をすべきなのだろうか。

アジェンダ・シアターに隠されたコスト

 セキュリティ問題の専門家ブルース・シュナイアーは2003年に「セキュリティ・シアター」という表現を打ち出した。これは「実際にセキュリティの改善につながる対策を取ることなく、人々に安全性が高まったと感じさせるセキュリティ対策」を指す。

 シュナイアーは、セキュリティ・シアターには効果がないだけでなく、2つの重大な点で現実のセキュリティを低下させるおそれがあると主張した。

 1つ目は、セキュリティ・シアターのような対策であっても、対策を講じる組織と守られる側の人間、双方のリソースを消費する。その結果、真のセキュリティ対策に割けるリソースが減少してしまうことだ。2つ目は、安全だという誤解を生み出すことで、人々の警戒心が薄れ、真のセキュリティが低下してしまうことである。

 筆者らの研究によって、会議のアジェンダも同じような罠にはまる可能性があることが明らかになっている。会議のたびに詳細なアジェンダを作成することで、多大な労力がかかる(他の業務に費やせるリソースが犠牲になる)。また、効果的な会議につながらないにもかかわらず、準備に力を尽くしたという感覚や達成感を味わうことができる。

 筆者らはある予備調査で、200人のフルタイムで働く従業員に、会議の準備について想像してもらい、さらに被検者の半分には、会議のアジェンダを作成したと仮定してもらった。すると、アジェンダを作成したと仮定したグループは、アジェンダの作成以外の準備がまったく同じだったグループと比べて、「準備ができている」と感じる割合が21%高く、会議の効率性と生産性も11~12%高くなると想定していた。

 人はアジェンダの作成に時間と労力を費やすと、そのアジェンダが付加価値をもたらすと考えがちだ。しかし、研究結果を見れば、会議の改善という点でアジェンダが役に立つか否かは完全に運次第であることがわかっている。書面のアジェンダが、出席者から見た会議の質の評価にプラスの影響を及ぼすことはなかったという研究もある。ほかにも、型通りのアジェンダの重要性は、会議が予定通りに開始され、終了することの重要性よりも低く、無料の食べ物の提供と同じくらいのインパクトしかないと結論づけた研究もある。

 しかも、セキュリティ・シアターと同様、アジェンダ・シアターにもコストがかかる。筆者らの調査の回答者は、アジェンダの作成に週3時間以上を費やしていたと報告している。このことから、アジェンダは単に誤った達成感をもたらすだけでなく、他の業務で有効活用できたはずのリソースを奪い、チームに害を与えている可能性がある。