HBR Staff; Samir Hussein/Getty Images; Unsplash

ダイナミックプライシング(DP)は、需給に応じて価格を変動させる仕組みとして、すでに航空会社やホテルなどで導入が進んでいる。最近では、スポーツチームやミュージシャンもチケット販売に取り入れ始めているが、法外な価格をつけたとファンを激怒させるケースが発生しているという。本稿では、DPを導入するに当たって顧客から批判を受けないために、企業が覚えておくべき教訓を7つ紹介する。

ロック界の大御所も批判を浴びた
ダイナミックプライシングの落とし穴

 米ロック界の大御所ブルース・スプリングスティーンが、2023年の全米ツアーのチケット価格にダイナミックプライシング(DP)を導入すると発表して、猛烈な批判を浴びている。

 DPとは、需給に応じて価格を変動させる仕組みで、航空会社やホテルの予約で馴染みがある消費者も多いだろう。近年は、スポーツチームもこの手法を導入しはじめており、チケット販売の世界最大手であるチケットマスターは、音楽アーティストにもこの仕組みの導入を推奨している。実際に、スプリングスティーンがチケットマスターを介して、一部の公演チケットにDPを導入したところ、最大で5000ドル超に跳ね上がったという。

 長年、労働者階級の味方だったスプリングスティーンが、コンサートのチケットに法外な価格をつけたとしてファンは激怒した。暴利をむさぼっていると非難する声もある。スプリングスティーンが導入した新たなチケット価格戦略をめぐる議論には、音楽業界だけでなく、企業も学ぶべき教訓がいくつかある。本稿では、その中から7つの教訓を紹介しよう。

1. 顧客には事前に説明しておく

 スプリングスティーンの場合、コンサートのチケットが発売になるまで、DPがどのくらい広範に使われるのか、価格がどのくらいまで上昇する可能性があるのかといった事項について、情報がまったくなかった。完全に予想外だったことが、ファンの怒りを買うことになった。

 このことから得られる教訓は明らかだ。企業は、新たな価格決定戦略を導入する前に、顧客にわかりやすく説明する必要がある。当初の猛批判を受け、チケットマスターはDPの対象となるのは全チケットの11.2%であり、それ以外は平均300ドル以下の定価で販売すると発表した。1000ドルを超えるチケットは1.3%のみだという。悪くない話だ。スプリングスティーンと彼のチームがその気になれば、全チケットをDPで売り切ることもできただろう。だが、ファンは事前に説明を受けていなかったため、混乱し、激怒した。