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新型コロナウイルス感染症の流行などに伴い、人々の仕事への意識は様変わりした。よりよい人生のため、離職することも選択肢の一つと考えるようになった。このような背景から、企業は人材の定着のために、考え方を改める必要に迫られている。本稿では、働く人々の考え方の変化に合わせて、企業はいかに対応すべきかを論じる。

企業が人材市場で成功するために必要な6つの改革

 多くのビジネスリーダーは、職場が平常に戻るのはいつだろうかと考えている。平常が「2019年」の状態を意味するならば、答えは「けっして戻らない」である。そして、それはよいことかもしれない。原因は、よくも悪くも新型コロナウイルス感染症だ。

 パンデミックは、すでに職場で進行していた3つの傾向すなわち、意義の追求、柔軟性への欲求、テクノロジーの変革のペースを加速させた。それによってハイブリッドワークやバーチャルワークが可能となったが、仕事のあり方と、求められるスキルも根本的に変わっている。

 そしてこの傾向は、労働力の大半が職に定着しない「グレート・アトリション」(大規模離職)にもつながっている。人材の専門家デイビッド・グリーンが指摘するように「従業員の要求が上がった」ため、組織は人材の募集、育成、保持をどうすべきか検討している。

 報酬や昇進といった従来の手段はいまだに重要であり、従業員の大部分に対して効果がある。しかし、多くの人々──実際には潜在的人材プールの大多数──は、さらに多くの報酬や昇進を求めているか、またはほかの優先事項がある。これらの人々を引き付けて保持できるか否かは雇用主次第だ。

 これは、言わば「グレート・リネゴシエーション」(大再交渉)である。従業員と雇用主の契約は、根本的かつ恒久的に変化しているのだ。この現象は、たとえ経済の低迷が続いても変わらないだろう。なぜなら、人材獲得競争が最も激しい分野では、職とスキルは今後も需要があるからだ。

 パーパスと、収入・エンゲージメント・ロイヤルティ(忠誠心)との相関関係は調査で明らかになっている。従業員が自分の仕事をつまらない、または意義がないと見なしたり、職場自体が不快であったりすれば、他のことは何の意味も持たない。したがって、雇用主が従業員に提供すべき価値提案の要素としてますます重要になっていることは、従業員が意義と刺激を見出して個人的に持続可能だと感じられるような、仕事におけるエンゲージメントである。

 雇用主はデジタルとデータが有効な環境で、よりパーソナライズされた、柔軟でダイナミックかつインクルーシブなシステムを構築し、優れたパフォーマンスの達成につなげる必要がある。筆者らは近年、マッキンゼー・アンド・カンパニーでこれに取り組んでおり、人材の獲得と育成に関する自社の強みを活かしながらも、大きな改革を実行している。

 企業が、新たな人材市場で成功したいならば、6つの改革を行う必要がある。筆者らはこれを、調査とみずからの体験を通じて学んだ。この改革はほとんどの企業にとって、従来のやり方に比べて難しい。だが従業員と雇用主の双方に、より多くの見返りをもたらすことになる。