一方向ではなく、双方向でリアルタイムの実習訓練を行う
従来の徒弟制度は、若年者が年長者から技能を学ぶものであった。今日では、学習と教育は双方向でなくてはならない。上級財務マネジャーと、そのマネジャーより職位が低いAI専門家を組ませるような実習訓練だ。
米国を本拠とする多国籍消費財企業のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)での取り組みは、この概念がどう制度化されているかを示す一例だ。同社の「リバースメンタリング」制度は、学習と教育を双方向で行うために、異なるキャリア階層の従業員にペアを組ませる。年下のパートナーがデジタルツールについて指導したり、年長者がマーケティングや製造の基礎を教えたりすることもありうる。
双方向学習のダイナミクスは、従業員に継続的成長の機会をもたらし、ロイヤルティと生産性の向上にも寄与しうる。マッキンゼー・グローバルインスティテュートの最近の調査によれば、優れた学習組織として知られる企業は、人材を引き付けることにも長けている。
従来型の業務規範ではなく、科学的なチームワークを重視する
デジタルツール、高度なアナリティクス技術、人工知能(AI)によって業務遂行の方法が変わった。ハイブリッドワークのテクノロジーは、世界各地の能力をわずか数回のクリックと電話で結集させる。マッキンゼーのデザイナーは、データサイエンティストや業界専門家、インプリメンテーション(実行支援)のコーチ、MBA取得者や顧客チームと、各自がどの場所にいても緊密に連携する。
アジャイルな業務手法によって、企業はより柔軟な業務編成を行うことができる。現在、ますます多くの従業員が、協働したい相手やつながりたい相手を選べるようになっている。
協働が可能だからといって、それが効果的に行われるとは限らないが、効果的なチームワークを促進する方法はある。
例としてグーグルの「プロジェクト・アリストテレス」は、最良のチームとは誰がメンバーにいるかではなく、どのように協力しているかで決まることを発見した。効果的なチームの最も重要な特性は、心理的安全性、相互の信頼、構造と明確性、仕事の意義であることが同プロジェクトで明らかになっている。
マッキンゼーはチームの慣行を検証して継続的に改善すべく、これらの知見とデータサイエンスを用いている。その手段として、世界各地に常時配置されている4000以上のチームを活用して学習システムを構築すると同時に、継続的に改善している。
たとえば、業務範囲の明確性、ライフワークバランス、プロジェクトのインパクトなどについて悩んでいるチームを見つけてサポートするために、さまざまなデータポイントを用いる。プロジェクト全体を通して、チームの活動がどう行われているかを分析する。プロジェクト完了後は、何が有効で何が奏功しなかったのかを評価するためにチームにアンケート調査を実施することで、チームの慣行と手法を継続的に改善できるようにしている。
この取り組みを通じて、対面での協働の価値とバーチャルの柔軟性を両立させる最善の方法や、個人が集中して生産的に仕事をする期間と、疲労の回復期間を両立させる方法に関する知見が生まれている。