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「女性は男性のように、積極的に交渉しようとしない」「女性が主張すると、チームの中で孤立する」という話を聞いたことはないだろうか。あるいは「賃金格差があるのだから、女性は賃金交渉しなければならない」と思い込んではいないだろうか。いずれも女性のキャリアを妨げる誤った思い込みであり、企業がジェンダー平等を実現するには、これらの固定概念を払拭しなければならない。本稿では上記の「3つの神話」に隠された事実を明らかにしたうえで、どのように公平な交渉の機会を共創するかを論じる。

ジェンダー平等の実現を妨げる「3つの神話」

 筆者らはこれまで長年にわたり、プロフェッショナルの女性がキャリアに関する交渉を行うのを支援してきた。具体的には、交渉に関する研修を実施したり、雇用主に助言したり、女性の成功とそれを妨げる落とし穴について研究したりしてきた。筆者の一人であるバレンタインは交渉に関するコーチ兼トレーナー、もう一人のボウルズは研究者であり教育者でもある。

 このような活動を続ける中で、筆者らは交渉に関する3つの「神話」について繰り返し耳にしてきた。神話のような固定観念によって、女性がキャリアの機会を活かし、障害を乗り越えることが妨げられているのではないかと懸念している。

 企業が未来の新しい働き方を再定義するにあたり、リーダーはこのような「神話」を打ち消すことが欠かせない。そうすることで、従業員とのキャリアに関する交渉をより公平なものにできる。

 ●神話1「男性は交渉することに積極的だが、女性は積極的でない」

 この神話とは異なり、実際には男性も女性も、ジェンダーの固定観念に反する形でリソースを獲得することが困難である。交渉の際には苦労するのが現実だ。なぜならば、特にそのような交渉の場では、抵抗に遭う可能性が高いからだ。

 これまでの伝統的な、そして多くの観点で時代遅れといえるジェンダーロール(性役割)に従えば、男性は一家の稼ぎ手の役割を担い、女性はケアの担い手の役割を果たすものとされる。

 このようなステレオタイプは、仕事の世界にも影響を及ぼす。その結果として、女性は昇給を求める交渉で男性よりも苦労し、男性は仕事と家庭の両立支援のための制度を利用しようとして交渉する時に女性よりも苦労する。加えて、男性であっても歴史的に疎外されてきた集団に属する場合には、給与に関する交渉で困難に直面しやすい。

 マネジャーとプロフェッショナルが、自身のキャリアについてどのようなことを交渉しているのかを検証した研究では、男性も女性も、昇進について交渉した経験を語る人が圧倒的に多い。そのような交渉を行う頻度に、男女間で違いは見られない。

 しかし、給与と業務量のいずれかに焦点を絞って検証すると、男性は給与について、女性は業務量、つまり仕事と家庭の両立について交渉を行うケースが多いことが示された(仮に交渉学の研究者が「仕事と家庭の両立支援制度に関する交渉」に着目していれば、「男性は交渉に消極的である」という結論に達していたかもしれない)。

 ジェンダー平等を実現するには、女性が男性と同じように給与について交渉できるようにすること、そして男性も女性と同じように仕事と家庭の両立に関して交渉できるようにすることが極めて重要になる。