
多くの人は、アイデアや問題点を思いついたら、すぐに上司に伝えたほうがよいと考えている。しかし実際は、不適切なタイミングで意見を示すと、上司から時間の無駄と見なされ、あなたの評価を下げてしまう可能性さえある。つまり、意見を述べる適切なタイミングの見極めと、それまで意見を慎む「戦略的沈黙」が非常に重要だ。本稿では、その適切なタイミングを見極めるための3つのポイント「3R」を解説する。
思いついたアイデアや懸念を
すぐに伝えていないか
部下がアイデアや懸念を伝えた時、上司が感謝したり評価したりするとは限らないことが、数十年に及ぶ研究から明らかになっている。むしろ混乱を生じさせたり、時間の無駄と見なされたりする可能性がある。マネジャーに対する暗黙の批判と、受け取られる場合さえある。
このため、仕事関連の問題を提起する時は、リスクとリターンの見極めが必要になる。価値あるアイデアや懸念だと上司が認めてくれれば、あなたは高い評価を受けるだろう。しかし、上司の集中力を削いだり、混乱させたりする意見だと判断されれば、ペナルティを受けるかもしれない。
筆者らは、インド経営大学院バンガロール校(IIMB)助教のアプルバ・サナリアと同教授であるスリニバス・エキララとの最新の共同研究により、部下の意見が上司に認められやすくなる有力な要因を発見した。それは、適切なタイミングが来るまで、懸念や意見を提起しないこと。すなわち、筆者らが「戦略的沈黙」と呼ぶ方法を駆使することだ。
部下は、この戦略的沈黙の有用性を過小評価しがちだ。多くの人は、アイデアや問題点を思いついたら、すぐに伝えたほうがいいと考えている。そのほうが信頼できる意見という印象を与えるし、上司にはそれに対処するのに十分な時間的猶予が生まれる。
しかし彼らは、タイミングを外して伝えられたメッセージが、いかにマネジャーに悪い印象を与えるかという事実を忘れてしまっている。マネジャーは対処しなければならない問題を多数抱えており、不適切なタイミングで示されたアイデアや懸念には、対処する能力も根気もないことが多い。
筆者らは、一般社員と管理職を含む数百人を対象に、定性的調査と実験の手法を用いた4つの研究を行った。そして、適切なタイミングまで問題提起を待つことができた一般社員は、質の高いインプットをもたらすと見なされ、その結果、より高い評価と報酬を得ることを明らかにした。