情熱と利益のバランスを図る
だからといって、筆者は別に、生涯収益を最大化するという近視眼的な目的追求のために、仕事で惨めな思いをすることに耐えるべきだと主張しているわけではない。仕事の時間を楽しむことは、人生全体の満足度を高める重要な要素だ。
とはいえ、全力で情熱を注ぐことと、一生お金に困らないために退屈な仕事をすることとの間には、大きな隔たりがある。以下に、キャリアを形成するうえで、情熱と利益の適切なバランスを生み出すためのガイドラインをいくつか紹介したい。
仕事の中で喜びを育む
仕事のすべてを好きになることは稀であり、ある種のファンタジーとさえいえる。しかし、仕事の内容に情熱を傾けなくとも、満足のいく仕事をする方法は豊富にある。
たとえば、大切な同僚と一緒に仕事をする、自分が尊重するミッションを掲げる組織で働く、仕事の中で自分一人で作業に専念することと周囲と協働することとの適切なバランスを見つける、といったことができるだろう。
仕事の割合を小さくする
これは納得できる選択でも、簡単な選択でもないかもしれないが、自分の時間とエネルギーのうち、フルタイムの仕事の占める割合を小さくして、より多くを自分の好きなことに使うことを考えてみてほしい。
パンデミックを経て、リモートワークやフレキシブルワークにシフトしたことで、それはより実現しやすくなった。充実感は得られなくても勤務時間が確実に予測できる仕事や、個人と家族のニーズを満たすのに十分な資金を得られるパートタイムの仕事を選択することで、有意義な活動を追求するための自由がより多く得られるだろう。
有意義な活動のポートフォリオを多様化する
スポーツやボランティア、音楽、あるいはパブでのトリビアナイトなど、仕事以外の趣味や活動に時間を割いて、有意義だと感じられる自己表現の時間をつくる。
仕事以外の情熱のために定期的に時間を確保するのは難しいかもしれないが、いまは強硬的にでも、それを実行しなければならない。時間を見つけ、それを死守するのだ。そうすることで、「理想の労働者という規範」をはねのけ、ただひたすら仕事に専念しなければならないという従来の要求に抗うことができる。
要求を掲げ、互いに助け合う
パンデミックがもたらしたこの転換期は、自分が望む有給の仕事との関係について再考すべき時である。つまり、交渉力を駆使できるこのタイミングを利用して、労働時間や仕事の仕組みを変えたり、仕事以外で自分のために時間を注いだりするのに必要なことを求めるのだ。
そして忘れてはいけないのは、あなたは一人ではないということだ。多くの労働者が、まさに同じ状況にある。これらの要求を集団で行う方法を見つけ、同僚や他の労働者と協力関係を築くことが欠かせない。同じ業界の人々と結束し、支援し合う。それ以外にも、どのような交渉戦術が有効だったかに目を配ろう。
歴史が示すように、労働者が力を持った今回のゴールデンタイムは実際、長く続かないかもしれない。この機会を利用して、よりよい仕事の未来を再設計してはどうだろう。
"Striking a Balance Between Your Passion and Your Paycheck," HBR.org, October 13, 2022.