メンバーが語ることを後押しする

 最初のステップは、メンバーが誇らしく思っていること、そしてそのことを誇りに思う理由を語るよう促すことだ。もっとも、わざわざそのための時間を設ける必要はない。定期的な個人面談の場や、オフィスでばったり出くわした時の会話で、次のようなシンプルな問いを投げかければよい。

・久しぶりですね。最近取り組んできた仕事で、誇らしく思っているものはありますか。
・どのような点を評価されたいと思っていますか。
・いま取り組んでいる仕事の中で、特に胸躍るものは何ですか。
・最近、仕事で最もつらかったことは何ですか。その状況にどのように対処してきたのですか。

 初めてこのような試みを実行する時は、問いを発するあなたの意図についてメンバーが不安を抱いたり、不審そうに見えたりしても、驚いてはならない。急にこのような問いを投げかけられたメンバーは、あなたの変化に驚いて、「最近、リーダーシップ研修にでも参加したのだろうか」と思うかもしれない。

 メンバーの不安や不審の気持ちを和らげる方法はある。質問を発する前に、このようなことを言えばよい。「最近ある論文を読んだのですが、それによると、マネジャーはメンバーが日々行っている仕事のほとんどを目にしていないとのことでした。そこで、私が気付いていないけれど、あなたが誇りに思っている仕事について、さらに知りたいと思ったのです」

 あなたの問いかけを受けて、自分がどのような仕事に取り組んできたかを語りはじめる人たちもいる。しかし、そのような人ばかりではない。「よいチームプレーヤーであることを誇らしく思っています」「すべての仕事に胸が躍ります」といった紋切り型の返答しかしなかったり、何も答えようとしなかったりする人たちもいるはずだ。

 そこで、次のステップが重要になる。

ポジティブに探りの言葉を投げかける

 ペトラ・コルバーが著書The Perfection Detox(未訳)で指摘しているように、人は自分の成し遂げた成果を過小評価し、自分の欠点を過大評価する傾向がある。そこで、リーダーは、メンバーがみずからの成果をじっくり思い返すことを助け、その成果を挙げるためにどのような努力を払ったのかを一緒に考えればよい。

 もし「わかりません」と返事されるのであれば、相手が自分の成し遂げたことについて考える呼び水になるような問いを発するとよいだろう。

 また「この新しいプログラムに1カ月悪戦苦闘してきましたが、ついに解決策が見つかりました。これでようやく完成に至りました。とても興奮しています」といったことを述べる人がいた場合は、ポジティブに探りの言葉を投げかけることにより、そのメンバーがみずからの努力と進歩に目を向けるよう促すとよい。たとえば、以下のような問いが有効だ。

・どのようにして、それを成し遂げたのですか。
・成し遂げるためには、どのようなことが必要でしたか。
・成し遂げる過程で、どのようなことを学びましたか。

 メンバーが語りはじめれば(おそらくその人自身にとって最も大切なことを話してくれるだろう)、その過程でどのような障害を乗り越えたのか、どのような犠牲を払ったのか、どのような試練を乗り越えたのかに注意を払って耳を傾けよう。

感想を伝える

 メンバーの話を聞いたあとは、リーダーであるあなたが感想を述べる段階だ。非常にシンプルなコメントでよい場合もあるだろう。たとえば、「いろいろありがとう。そんなに頑張ってくれていたとは、まったく知りませんでした」とか、「教えてくれてありがとう。素晴らしい話を聞くことができました」といった具合だ。

 一方、そのメンバーと話すのが久しぶりだったり、そのメンバーが仕事で苦戦していたりする場合には、さらに詳しいコメントを述べなくてはならない。このようなケースでは、頑張りをよく理解していることを伝えて、その人の努力について言葉を尽くして語るとよいだろう。

 たとえば、このような感じだ。「アリア、あなたがつくった研修プログラムが素晴らしいことは知っていました。でも、あなたがそのために、見えない場所でとても多くの努力を払っていたことは、まったく知りませんでした。カリキュラムの設計に始まり、コンテンツの収録と編集、そしてすべての店舗でプログラムを実施するためのアイデアに至るまで、すべてが感嘆すべきものです。しかも、あなたは多忙な私生活も抱えた中で、貢献をしてくれたのです。本当にありがとうございました」

 リフレクティブレコグニションは、メンバーが誇らしく思っていること、そしてそのことを誇りに思っている理由を語るよう促すシンプルな方法だ。

 忘れてはならないのは、誇らしく思っている物事について語ることに慣れていない人もいるということだ。そのため、リフレクティブレコグニションの取り組みが軌道に乗るまでには、少し時間を要する場合があるかもしれない。

 それでも、個人面談やチームの会議にこのような取り組みを定着させることができれば、メンバーは自分の思いを積極的に語るようになり、チーム内に評価と祝福の文化が育まれるだろう。そうすれば、よい仕事をした人がきちんと評価されるようになり、メンバーは自分が大切にされていると思えるようになる。


"A Better Way to Recognize Your Employees," HBR.org, October 25, 2022.