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誇りに思うことと、その理由を共有する
リフレクティブレコグニション
優れたリーダーならよく知っていることだが、トップクラスの人材のエンゲージメントを高めて会社につなぎとめ、利益を上げるためには、リーダーがしっかり従業員を評価することが欠かせない。
この点は、研究によって裏付けられている。最近の研究によると、マネジャーがよく評価してくれていると感じている働き手は、そうでない働き手に比べて、エンゲージメントが平均で40%以上高い。しかも、そのような働き手は、自信を持ち、より多くの情報を与えられていると感じていて、自発的に努力し、退職する確率が低いという。
卓越したリーダーはたいてい、メンバーをきちんと評価したいという意向を持っている。しかし、評価すべき要素に気付くことは難しい。最近はリモートワークの導入が一般的になり、それがさらに難しくなっている。
そこで、リーダーには、新しいマネジメント手法を用いることが求められるようになっている。その手法とは「リフレクティブレコグニション」(内省を通じた評価)とでも呼ぶべきものである。これは、問いかけを通じて、個人やグループが誇りに感じている要素と、その要素を誇りに感じる理由を考え、それを共有するように促す取り組みだ。
筆者は、メンバーを有効に評価する方法について研究し、その方法についてリーダー向けの研修を行うようになって、すでに10年以上になる。これまでの経験を通じて感じることは、私たちが一般的に用いている従業員を称賛する方法には限界があるということだ。
これまでの一般的なやり方では、
アリアという女性は、米国東部の大規模なレストランチェーンで従業員研修担当のマネジャーを務めていた。「マネジャーは私をしっかり評価してくれています。でも、ほめてくれるのは、私の組織づくりのスキルばかりです。マネジャーがそのようなスキルを重んじていることはわかっています。でも、私は過去半年間、新しい研修プログラムを設計し、教材を制作し、研修を実施することに打ち込んできました。そのために私が知恵を絞り、多くの努力を費やしたこともすべて評価してほしいのです」と、アリアは筆者に語った。
このように感じているのは、アリアだけではない。多くの働き手は、誰にも目に留めてもらえない仕事も含めて、すべての活動を評価してほしいと考えている。長時間働いたり、難しい顧客に電話をしたり、複雑な技術上の問題に対処したり、締め切りに間に合わせるために力の限り努力をしたり……私生活上のさまざまな課題を抱えながら、そのように働いている。仕事だけでなく、私生活への対処も含めて、認めてほしいのだ。
一方、働き手の中には、多くの成果を挙げても、そして、マネジャーが高い評価を与えても、少しスピードダウンして進歩を祝おうという気持ちになれない人たちがいる。そのような人たちは、結果として燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥ってしまう場合が少なくない。
その点、働き手が自分の成し遂げたことを自分自身で十分に評価し、また、マネジャーの目に留まりにくい仕事も評価してもらえていると思えるようにするにはリフレクティブレコグニションが有効だ。
内省を通じた評価を実践する
ここまで述べてきたように、リーダーはリフレクティブレコグニションを取り入れることにより、メンバーが最も大切に思っていることを知る手がかりを得られる。加えて、メンバーが自分の進歩と成果を認識することをサポートできる。
恩恵はそれだけに留まらない。そのプロセスを通じて、メンバーが自分の達成したことを認識できるようになり、難しい課題にどのように対処し、どうやって進歩を遂げたかをよく考えるようになれば、エンゲージメントが高まる効果も期待できる。
研究によると、人は重要と感じている目標に向けて前進できれば、さらに努力を続けようというモチベーションが高まる。したがって、たとえ小さな成功であっても、それについてじっくり考えることにより、さらに成果を挙げたいというモチベーションが湧いてくるのだ。
この手法の最も素晴らしい点は、極めてシンプルなことだ。特段の準備をする必要はないし、コストもかからない。それでありながら、双方の状況を大きく変えることができる。
リフレクティブレコグニションは、以下の3つのステップで進める。メンバーの立場から見ると、ごく普通の会話と変わらないだろう。