
リーダーの感情労働は見過ごされてきた
優れたリーダーは、昔から感情をコントロールしながら仕事をしてきた。部下が挫折したり落胆したりしている時は、楽観的な見方や自信を示す。たとえ会社の戦略的な方向性に懐疑的であっても、そのような感情をみじんも見せず、会社の旗の下に社員を結束させる。
リーダーは感情労働によって自分の感情や表情をコントロールし、自分のポジションに期待される役割を果たすわけだが、その負担はとても大きい。常に笑顔が求められるサービス業の最前線で働く労働者と同じくらい、リーダーは感情労働を行っているという研究もある。リーダーが組織の雰囲気や気分に大きなインパクトを与え、そして業績に影響を及ぼすことを考えると、こうした感情労働は必要不可欠なものだ。
しかし、それほど重要であるにもかかわらず、これまでリーダーの感情労働は、研究対象としてもビジネスの現場でも見過ごされてきた。そしていま、仕事を取り巻く環境の変化により、リーダーに求められる感情労働の負担はかつてないほど大きくなっている。
リーダーは、従業員と自分の心身の健康や燃え尽き症候群(バーンアウト)に気を配り、非常に細やかな心配りと思いやりを示し、柔軟な働き方やリモートワークを認めることを期待されている。それと同時に、業績を管理し、より少ないリソースで多くのことを成し遂げ、人材の採用や維持に関する課題を解決しなければならない。
リーダーは本音で行動しているように見えるべきだが、悩みをあまりに正直に打ち明けると、部下たちにリーダーとしての資質を疑われてしまうかもしれない。いわゆる「自分らしさのパラドックス」と呼ばれる状況だ。
適切なサポートがなければ、こうして増え続ける感情労働の負担によって、大きな犠牲を払うことになるだろう。また、サポートを得られなければ、リーダーはバーンアウトや健康上の問題を抱えるリスクが高まる。その結果、組織の生産性とパフォーマンスの低下につながり、有能なリーダーの離職率を高めるおそれがある。
こうしたリスクを避けるために、組織は感情労働を行うリーダーをサポートしなければならない。以下では、その方法を紹介しよう。