共感重視のマーケティングを正しく行う方法
Alex Eben Meyer
サマリー:共感は、マーケティング戦略の土台である。しかし、マーケターが顧客に対する共感を常にうまく表現できているわけではない。ブランドが打ち出すメッセージにより、顧客との結びつきを生み出すには、3つの戦略が必要... もっと見るになるというのが本稿の主張だ。それは、変化の兆しに注意し、顧客に選択権を与え、視覚情報でメッセージの温度感を調整するというものである。共感を伴ったマーケティングを適切なものにするには、取り組みを人間味があり、嘘のないものにすることが重要だという。 閉じる

顧客と真につながるため、3つの戦略を持ってメッセージを打ち出す

 共感は、有効なマーケティング戦略の土台だ。しかし、マーケターが顧客に対する共感を常にうまく表現できているわけではない。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まるとすぐに、マーケターたちは「過去に例のない時代」の到来を喧伝する風潮に乗って、エッセンシャルワーカーへの支持と、社会の結束を訴えるメッセージを立て続けに送り出した。それから2年経った現在、多くの人が悲嘆に暮れる中、いくつものメッセージを発信したところで空虚に聞こえてしまう。

 しかし、ブランドが感情的要素や顧客との絆を表現する必要がないというわけではない。むしろ、その正反対だ。

 真の共感を表現したければ、その感情がつくりものであってはならない。ただ時流に乗りたいというだけで実行される感情的なマーケティングキャンペーンは、よくても不誠実、下手をすれば詐欺的と受け取られる。真の共感は、ブランドと顧客の間に真の絆を生み出すものでなくてはならない。

 ナイキやイケアなどの企業がコロナ禍の初期に展開したストーリー型の広告は、傑出したものだった。しかし、ほかの多くのブランドは、「みんなで一緒に乗り切ろう」という連帯感に訴えかけるキャンペーンをぎこちなく打ち出したものの、ほとんど、あるいはまったく実を結ばなかった。自宅や近場で少し贅沢な休暇を楽しむ「ステイケーション」向けの服を売ろうとしたファッションブランドや、「健康を大切にしよう」というメッセージを前面に押し出して電子タバコを20%の値引きで売り込んだルーン社などがその例だ。

 ブランドが打ち出すメッセージを人間味のあるものにし、真の思いやりを表現し、顧客との強力な結びつきを生み出すためには、以下の3つの戦略が有効かもしれない。

1. 常に変化の兆しに注意を払う

 この数年間の出来事から学べることがあるとすれば、それは、時として極めて短い間に非常に多くの変化が訪れる場合があるということだ。これを前提にすると、顧客のウオンツとニーズ、そして悩みの種を常に把握しておく必要がある。それを怠ったブランドは、現実から乖離しているように思われてしまう。

 情報を収集するためにどのように顧客と関わるべきかは、さまざまな要素によって決まる。それは、業種によっても異なるし、法人向けビジネスの領域で活動しているか、消費者向けビジネスの領域で活動しているかによっても変わってくる。

 しかし、忘れてはならないことがある。それは、いわゆる「アネクデータ」──人々の実際の行動に基づくデータではなく、人々が言葉で表現した個人の選好に基づくデータ──と、人々が実際に行う意思決定についてのデータのバランスを取ることである。

 時には、ある人の本当の選好と、言葉で表現される選好が一致しない場合もある。人は問いに答える時、「理想の自分」を想定して回答することが多いためだ。たとえば、実際には通勤の時にブリトニー・スピアーズの曲を聞いているのに、質問に答える時は公共ラジオのNPRでニュース番組を聞いていると答える人がいる。

 あなたの会社がオンラインショッピング専業の企業だとすれば、顧客について知るために、座談会形式の意識調査を実施したり、アンケート調査を行ったりするかもしれない。しかし、自社のウェブサイト上でのユーザーの行動をモニタリングして、それを調査結果と照らし合わせることも忘れてはならない。加えて、顧客のウェブ閲覧・購買習慣をさらに詳しく知るために、インタラクティブな要素を取り入れてもよいだろう。

 ほかの人の視点を真に理解することは、共感を伴ったマーケティングの礎石だ。顧客の視点で世界を見ることにより、自社の戦略と実行の中心に顧客を据えることができる。