バイタルが注力した3つのコア領域

 このモデルを成長させるために、バイタルは事業における3つのコア領域に投資する必要があった。すなわち、ユーザー基盤(最終消費者とパートナーレストランの数)、オンラインプラットフォームとデータ(スマートでリユース可能なシステムとプロダクトと消費者行動のデータを追跡する機能)、そしてオフラインプロダクトの生産(さまざまな種類と量の食品容器)だ。

 バイタルが当初から持ち合わせていたプラットフォーム技術でできたのは、QRコードをスキャンして、容器のチェックインとチェックアウトを記録することだけだった。だが、ユーザーフレンドリーですぐに使える技術のほうが採用されやすいと、バイタルは考えた。そこで、最初に導入する市場として選ばれたのが、ケルン、ミュンヘン、ベルリンの3都市だ。これらの街には、オフラインのパートナーが密集しており、さらにオンラインデータのネットワーク効果も期待できるという理由からだった。

 消費者はすぐにバイタルのO2O(オンライン・トゥ・オフライン)プラットフォームの優位性に納得したが、当初は参加してくれるレストランを見つけるのが大変だった。地元のレストランには、オンラインプラットフォームとつながるデジタルインフラ(スマートデバイス、QRコードリーダー、POSシステムなど)がないことが多かったからだ。

 2020年のコロナ禍は、状況を一変させた。外食産業のデジタル化が加速し、出前の需要が急増した。バイタルが主要都市のレストランに、同社のオンラインプラットフォームの提供を拡大したため、消費者は好みのレストランでバイタルのサービスを利用できるようになった。同時に、バイタルがドイツ最大の出前チェーンと提携したことで、利用者がいちだんと増えたため、レストランにとってもバイタルのパートナーに加わる魅力が高まった。

 ユーザーの急増に伴い大量のデータがもたらされるようになり、それをうまく活用することが、バイタルの経営陣の中で最大の関心事となった。デジタルエンジニアのチームをつくり、オンラインプラットフォームに新機能を追加したほか、オペレーションチームがビッグデータの分析を本格的に始めることで、プロダクト戦略の見直し(新しいタイプの容器開発やほかの容器メーカーをサプライヤーに登用するなど)が行われるようになった。

 現在、ドイツ全体で3500以上のレストランがバイタルのパートナーとなっており、パートナーレスランと消費者の間でやり取りされる容器は32万個を超える。それだけでも、470万個以上の使い捨て容器の節約だ。

 ある大手ファストフードチェーンは、供給パートナーの急激な広がりと、消費者の利用率上昇に感銘を受け、バイタルのO2Oプラットフォームを試験的に採用することを決めた。成功すれば、ドイツ全土で展開を始める計画だ。