持続可能なリサイクル容器システムはどのように実現したか
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サマリー:テイクアウトやデリバリー用容器は、持続可能性の面で深刻な問題に直面している。それに対し、デジタル技術とAIの活用により、サステナブルかつ消費者やレストランのコストや手間を最小限に抑えたリサイクル容器シス... もっと見るテムを構築したのが、ドイツ企業のバイタルだ。本稿では、その仕組みを明らかにするとともに、バイタルがその実践から得たO2Oプラットフォームを拡大するための5つの教訓を紹介する。 閉じる

テイクアウト容器の問題を
デジタルとAIで解決する

 これまで使われてきた食品包装やテイクアウト・デリバリー用の容器は、持続可能性の面で深刻な問題に直面している。清涼飲料水の容器は、都市部における固形廃棄物の最大48%、海洋ごみの最大26%を占める。また、従来のデポジット制度によるリサイクル・再利用システムは、効果がない。なぜなら、消費者には値上げと認識され、食品提供者には煩雑な仕組みであるため、顧客が容器を迅速に返却するインセンティブにつながっていないのだ。

 しかし、デジタル技術と人工知能(AI)を活用することにより、テイクアウト食品向けに、よりサステナブルで、デポジット不要のリサイクル容器システムを提供することが商業的に可能になった。これは、サプライヤーがレストランに容器を貸し出し、エンドユーザーが希望のテイクアウト食品を受け取った後、一定期間内に容器を無料で返却するもので、レストランはその使用済み容器を洗浄し、再利用する仕組みになっている。

 この新しい取り組みを行うパイオニアの一つが、ドイツ企業のバイタルだ。同社のパートナーサプライヤーがバイタルから指定された材料とデザインによって容器を製造し、バイタルはその容器をテイクアウト食品業者に貸し出す。料金は使用回数に応じて決まる。本稿では、その仕組みを明らかにするとともに、その実践から得られた5つの教訓を紹介する。

データの力を活用する

 バイタルが成功したカギは、包装容器にQRコードを入れることで、サプライチェーン全体にわたって、容器に関するデータを集められるようにしたことにある。このデータを使って訓練された機械学習アルゴリズムが、パートナーレストランにおける容器のニーズを予測して、パートナー間で必要な容器を回す負荷分散ルートを構築する。

 これによりバイタルは、各パートナーレストランのニーズを管理し、物流計画を最適化できる。このアルゴリズムは、パートナーレストランごとに、向こう7日間に必要なボウルやボックスなどの容器数を種類別に箱数で予測し、バイタルのシステムに自動的に注文を入れる。この注文データはルート計画にも入力され、注文の実行日に配送を担当するカーゴバイクのドライバーに自動的に送信される。

 必要な容器の数と種類を正確かつタイムリーに予想して、消費者の返却行動をしっかり予測すると、レストランではスペアを用意する必要性が低下し、在庫を最適化できる。さらに、臨時的な配送がなくなり、レストランでの作業が最小限に抑えられ、容器の稼働率が最大化することで、環境インパクトを減らすことができる。また、これはバイタルの輸送計画の最適化も可能にする。バイタルのドライバーによる臨時的な配送や再配送は大幅に減り、カーゴバイクの利用率が最大化される。

 顧客は使用済み容器を洗うことなく、バイタルのパートナーレストランであればどこにでも返却できるため、コストや手間をほとんどかけずにゴミを減らすことができる。パートナーレストランは、プラスチック容器の在庫を減らし、容器にかかるコストを削減したうえで、バイタルのオンラインプラットフォームを介して消費者行動に関するインサイトを得ることができる。