高齢化をビジネスチャンスにするための4つの視点
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サマリー:不確実な時代において、少しでも正確に未来を予測するためには、確実に起こると考えられている将来の変化を把握することだ。世界的な人口の増加と、高齢化はその一つであるというのが、本稿の指摘である。ビジネスリ... もっと見るーダーは、いかに高齢化をとらえ、新たな事業機会に結びつけるべきか。そのための基本となる4つの視点を提示する。 閉じる

高齢化はビジネスにどのような影響を与えるのか

 国連の最新の報告によると、全世界の人口の3分の2にあたる人々は、平均寿命が伸び続けている。同時に出生率が人口置換水準を下回る国々で暮らしている。人口置換水準とは人口が長期的に増えも減りもせずに一定となることを示している。つまり、多くの国で高齢化が急速に進んでおり、(まだ人口が減少に転じていない国も)まもなく減少に転じるだろう。今世紀初頭には32カ国で、年齢の中央値が35歳を超えていた。2020年代の終わりまでに、その数は2倍以上に増えるだろう。そして、そのうち25カ国は人口の半分が45歳以上になる見込みだ。

 多くの点で、私たちは未来が不確実だと思っているかもしれない。しかし、さまざまな技術的、政治的、経済的な変化と違って、人口動態のトレンドは極めて予測しやすい。社会の高齢化は、ほぼ避けられない。そして、それは世界の労働力人口や市場、働き方の未来に多大な影響を与え、ビジネスリーダーにとっていくつか重要な意味を持つことになる。

1. 労働力の高齢化

 中国やカナダ、イタリアなど多くの国で、出生率の低下により、労働力の新規参入者が年々減少している。したがって、企業は、より年長の従業員に長く勤めてもらう必要に迫られている。年長の労働者が新しいスキルを身につけるためのトレーニングや能力開発への投資はもちろん、彼らが農場や工場で重い荷物を安全に持ち上げるための装着型外骨格デバイスなど、アクセシビリティと安全対策への投資も拡大する必要がある。

 さらに、新しい、より若い人材の確保が難しくなるにつれて、多くの企業が一部の役割を代替または補強するためのオートメーションに目を向けている。完全にバーチャルな販売員や顧客サービス担当者、高齢者の付き添いなどを提供する「デジタル労働力」ツールの開発にも多くの企業が取り組んでいる。人工知能(AI)の発展と人口動態トレンドの変化の間で、新しいテクノロジーは労働力としてますます重要な要素になりそうだ。

2. 顧客基盤の高齢化

 この10年で世界の70歳以上の人口は6億2700万人増えて、全人口に占める割合も5%から12%になった。さらに10年後には、世界の全人口80億人のうち16%が70歳以上になる。つまり、このセグメントに対応した製品やサービスには、途方もなく大きな機会がある。

 最も成長が見込まれるのはヘルスケア部門で、高齢者用の医薬品、プライマリケアと専門家による介護、ウェアラブルな血糖値測定器や心電図など関連製品の需要は、今後も拡大するだろう。また、平均寿命が伸びた一方、「健康寿命」の伸びは多くの国や地域で鈍化している。つまり、増え続ける人口層の健康と福祉をサポートする方法を見つけることは、ビジネスチャンスであるだけでなく、政策立案者や政府の指導者にとっても非常に重要なのだ。

 たとえば、米国では高齢者が地方に住んでいることが多く、しばしば医療へのアクセスが悪い。アーカンソー、メイン、ミシシッピ、バーモント、ウェストバージニア州では、高齢者の半分以上が農村部に住んでおり、これらの市場では高齢者に焦点を当てたヘルスケアサービスの需要がかなり大きく、今後も増えていくと考えられる。

 ヘルスケアや、シニア世代に特化したビジネス以外にも、顧客基盤の高齢化はさまざまな分野の産業に影響を与えているかもしれない。たとえば、不動産業界では、高齢化した住宅所有者が暮らしをコンパクトにすることを検討したり、成人した子どもが高齢の両親のために部屋がある住宅の購入を検討したりするだろう。そこで、不動産業者は人口動態の変化が加速している間に、買い手と売り手を支援するような専門知識を身に付け、それを示すことによって、ますます利益を得られるようになるかもしれない。