
マネジャーは極めて重要な存在である
2013年にギャラップが行った象徴的な調査の結果を覚えている人もいるかもしれない。「人々は会社を去るのではなく、マネジャーのもとを去る」というものだ。10年近く前の調査だが、この格言は今日でも通用する。
筆者はここ数年、ハイブリッドワークの世界にいかに「人間らしさ」をもたらすかについて企業に助言をしているが、その中でマネジャーの重要性を感じるようになった。さらに最近では、今日の職場における人材確保に関する本を執筆するに当たり、多くの企業のリーダーとマネジャーに対する見方を議論する機会を得た。
それによってわかったことは、マネジャーはいま、極めて重要な存在だということだ。「大退職時代」(グレート・レジグネーション)、長引くパンデミック、働き方に柔軟性を求める従業員、急増するメンタルヘルス問題、迫り来る不況、そして不確実性の中で、ますます多くの従業員が指示と支援を求めて直属の上司を頼るようになっているのだ。
データもそれを裏付けている。セールスフォース・ドットコムの最近の調査では、次のような重要な見解が示された。「かつて従業員は、会社についての情報源として経営幹部を最も信頼していた(中略)現在では、組織とその優先事項を理解するために、経営陣よりも直属の上司が最も重要であると評価している」
そして2021年12月には、従業員は悪い仕事ではなく悪い上司のもとを去るというギャラップの調査結果が、複数の研究で裏付けられた。たとえば、グッドハイヤーが米国人労働者3000人を調査したところ、悪いマネジャーが原因で仕事を辞める可能性があると答えた人が82%に上った。
しかし、残念ながら、マネジャーは十分なトレーニングを受けておらず、激動の時代にチームを率いる中で過重労働を強いられているため、メンバーが抱える問題に常に対応できるわけではない。実際、フューチャー・フォーラムの最新の調査によると、マネジャーの43%が「燃え尽きている」と回答しており、これはあらゆる職種の中で最も高い数値である。
マネジャーと、彼らの部下である従業員を維持するためには、マネジャーの成長に投資する必要がある。そのための方法を3つ教えよう。
マネジャーの役割の重要性を共有する
ジョージタウン大学教授でThe Necessary Journey(未訳)の著書があるエラ・ワシントンは、2021年10月のフォーチュン・フォーラム・カンファレンスで、この問題をみごとにとらえ、こう述べた。「従業員とつながりを持つことは、マネジャーにとって『よけいな』仕事と思われがちで、リストの一番下に置かれます。それはよけいなものではなく、不可欠なものであると、企業は明確にする必要があるのです」
ゼネラル・ミルズの「エンゲージング・リーダー」(EL)プログラムは、このつながりを優先させることを目的としている。同社のグローバルCHRO(最高人事責任者)のジャクリーン R. ウィリアムズ・ロールによると、このプログラムは2018年、マネジャーにこう問いかけることから始まった。「あなたが素晴らしいリーダーになるためには何が必要でしょうか」。そのフィードバックから、ELプログラムが生まれた。
ELプログラムは、ゼネラル・ミルズの4つのコアバリュー(ともに勝利する、継続的に革新を起こす、一体感を擁護する、常に正しいことをする)を通して、マネジャーに振り返りの場を与えるとともに、コアバリューを実行する方法を提示している。マネジャーは、「自分は各項目について、どの程度の成果を上げているか」という問いに答えるよう促され、直属の上司からフィードバックも受ける。
ELプログラムでは、フィードバックを行う関係を正式なものにすることで、マネジャーの経験だけでなく、マネジャーと直属の部下との関係も、振り返るに値するものと定めている。「従業員の88%が、マネジャーからサポートされていると感じています。そして、それはエンゲージメントだけでなく、リテンション(定着)にも直結しているのです」とウィリアムズ・ロールは言う。