意見を求められたら正直に答えなさい
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サマリー:周囲の人におおらかな人物であると思われたい、あるいは好感を持ってもらいたいと考えるのはよくあることだ。そのために、みずからの意見を具体的に発しない人もいるだろう。しかしながら、それでは相手の好感を得ら... もっと見るれないという、狙いとは真逆の結果につながることが筆者らの研究で明らかになった。意見を言わないということは、おおらかであるということではなく、相手には否定的な意見を持っていると伝わるのである。円滑なコミュニケーションのためには、敬意を持ってたとえ反対意見であっても、みずからの意見を明確に伝えることが重要だ。 閉じる

意見を伝えないと関係は悪化する

 あなたは人から意見を求められたら、すぐに答えるだろうか。それとも、こだわりがなく「あなたが決めてよいですよ」と言ったり、「何でもいいです」と当たり障りのない返事をしたり、相手を喜ばせようと「あなたに都合のよいようにしてください」と言ったりするだろうか。

 多くの人は、おおらかで感じよいように見せようと、意図的に自分の選好を伏せる。特に職場では、あまり意見を言わないほうが同僚や部下、上司によい印象を与えると考えるかもしれない。筆者らは、計7000人以上が参加した3つの大規模な研究プロジェクトを実施し、さまざまな対人関係を調査した結果、意見を言わないことはかえって好感度を下げ、人間関係を悪化させることがわかった。

おおらかさは好かれない

 最初の研究プロジェクトでは、参加者が友人や知人に対し、どのレストランや映画、美術館に行きたいかと尋ねた時の参加者の反応を調べた。その結果、どのような状況であれほとんどの場合、相手に特定の選択肢を選んでほしいと答えた。そして、相手が選択しなかった場合(尋ねられた人はおおらかに見られたいという理由で頻繁にそうしていた)、参加者の相手に対する好感度が下がり、今後その人と外出したいと思わなくなった。

 なぜか。自分の選好を伏せると好感度が上がると思うかもしれないが、実は、人があなたに意見を求める時、彼らは概して意思決定の助けを求めている。研究の参加者らは、友人が意見を言わないことで決断が難しくなり、この不快な経験が相手に対する印象を悪くすることが多いと答えた。

「意見を言わない」は「否定的な意見」ととらえられる

 選好を示さないことが逆効果になるもう一つの理由は、「気にしない」と伝えることで、本当は意見を持っているのに対立を避けるために隠していると思われてしまうことだ。

 2つ目の研究プロジェクトでは、「好みはない」と言われると、意思決定者は、相手が自分と反対の選好を持つためにそう言っていると考えてしまうことが明らかになった。こうした場合、意思決定者はみずからが望まない選択肢を選ぶ可能性が高くなり(それが相手の本当の希望だと考えるため)、最終的にこの交流の満足度が低くなる。

沈黙は人間味に欠けると認識される

 友人や同僚から意見を求められても何も言わないのは、明らかに逆効果だ。しかし、誰もあなたの意見を頼りにしていない状況ではどうだろうか。

 3つ目の研究プロジェクトでは、共同の決定のために意見を求められるのではなく、一般的な好みを尋ねられた場合について調べた。参加者には、好きな食べ物や音楽について、好みを示さない人と示す人のどちらかの架空の人物について読んでもらい、その人物に対する印象を語ってもらった。

 その結果、肯定的であれ否定的であれ、意見を述べる人はより個性的で明確なアイデンティティを持っているように見られ、意見を言わない人はロボットのようで人間味に欠けるように見られた。

 さらに、このネガティブな影響が相手の仕事に対する評価にも及ぶことが、ある研究で示された。参加者に部屋の写真を見せ、その部屋を手掛けたインテリアデザイナーについて、自分の好きな食べ物や音楽を明かさなかったと告げた場合は、好みを積極的に表現したと告げた場合よりも、部屋のデザインに対する評価が低かった。