有能なマネジャーは健全な自己表現を奨励し、その模範となる

 従業員もマネジャーも、「役に立ちたい」「対立を避けたい」「協力的な職場にしたい」という思いから、自分の選好を示したり、共同の決定に対して意見を述べたりすることに消極的になることがある。しかし、このようなアプローチは人間関係を悪化させ、有能でなく、好感が持てないという印象を周囲に与えることを筆者らの研究は実証している。

 この問題に対処するために、マネジャーはチーム内で健全な自己表現を奨励するために手段を講じる必要がある。ある研究では、意思決定者が「自分一人で選択はしたくない」と明言した場合、人々が自分の選好を共有する確率が2倍になることがわかった。マネジャーとして、意思決定の前に全員の意見を聞きたいと明確に伝えるだけでも、人々が心を開く可能性は大幅に高まるだろう。

 また、従業員が趣味や嗜好、さまざまなトピックに関する意見を共有することを目的としたイベントやデジタルチャネルを設けたり、よくある誤解を解消するためのチームビルディングの活動を実施したりすることで、従業員が安心して自分の選好を伝えられる環境を構築することができる。

 場合によっては、会議の前後にアンケートを実施し、その場では緊張して発言できないような従業員から積極的に意見を求めることも意味があるだろう。また、顧客と接する職務の場合、好感度を上げ、より強いつながりを築けるよう、マネジャーは、顧客に意見を伝えるよう、従業員に明確に促すことも検討すべきかもしれない。

 しかし、最も重要なのは、マネジャーや幹部社員がみずからオープンなコミュニケーションの模範となることだ。特に、現場の従業員とのつながりを保つのに苦労しているシニアリーダーは、自分の選好をオープンにすることで、「冷淡」とか「人間味に欠ける」といった印象を払拭することができる。

 実際、筆者らの研究では、従業員を遠ざけるのではなく、たとえ反対意見であっても意見を表明することで、リーダーはより人間らしく、有能に見られ、より好感が持たれることが分かっている。そうすることで、リーダー自身も組織全体の同僚との関係が良くなり、また、沈黙しがちな従業員にとっても、自分の選好を表現することが当たり前になる。

 次に人から意見を尋ねられたら、ためらわずに答えるべきだ。敬意を持って正直に自分の選好を伝えることは、フィードバックを求めている人の助けになり、なおかつ自分に好感持ってもらえることが筆者らの研究で示されている。

 友人からどこに食事に行きたいか聞かれた時も、クライアントから好きな音楽を尋ねられた時も、同僚から職場の決定事項についての意見を求められた時も、自分の意見を伝えることは、ほぼ必ず双方にメリットがあると、データは示している。


"When Someone Asks Your Opinion, Give It," HBR.org, December 02, 2022.