企業の取締役になるための4つの戦略
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サマリー:ビジネスの世界で充実したキャリアを築き、影響力を発揮するために取締役を目指そうとする時、必要なのは知識やスキルだろうか。あるいは人脈だろうか。「『何』を知っているかでなく、『誰』を知っているかだ」とい... もっと見るう言葉を、あなたも聞いたことがあるかもしれない。だが、もはや「自分が誰を知っているか」では足りず、「誰が自分を知っているか」がキャリアの成功を大きく左右すると、筆者は主張する。本稿では、取締役を目指すにあたって欠かせないネットワークを構築するための4つの戦略を紹介する。 閉じる

強固で健全なネットワークをどう構築するか

「『何』を知っているかでなく、『誰』を知っているかだ」という言葉を、誰しも聞いたことがあるだろう。しかし、適切な人物を知っているだけでは十分ではないと認識している人は、ほとんどいない。あなたのことを誰が知っているかによって、あなたにもたらされるチャンスが変わるのだ。

 このことは、筆者の最近の研究によっても裏付けられている。今回の研究では、歴史的に過小評価され、企業の取締役会の中でも少数派とされる人々が、どのようにしてその地位を獲得したかを調べた。具体的には、上場企業の取締役を務める黒人女性12人を対象に、それぞれのキャリアパスと採用に至る過程について話を聞いた。

 その結果、取締役に空席が出るといった機会が訪れた時、私たちは知らずしらずのうちに、現在および過去の人間関係のネットワークに基づいて、特定、審査、選択あるいは排除されることが明らかになった。そうした人間関係はすべて、ソーシャルメディアで公開されている。

 これはつまり、充実していて影響力を発揮できるキャリアを構築するには、自分のキャリアを通じて人間関係を築き、継続的に検証し、大切に育て、必要に応じて修復する必要があるのだ。

 また、今回の研究からは、採用担当者や取締役会は、現職や過去の取締役に似た最高経営幹部候補を探し、事前審査する傾向があることも明らかになった。過小評価グループの候補者にとっては、自分のことを知っていて、自分が何を成し遂げたいかを知っている人々との間に強固で健全なネットワークを構築することが、極めて重要になるということだ。そのために役立つ4つの戦略を紹介しよう。

1. 付加価値を与える能力を示す

 あなたがいま、キャリアの初期、中期、後期のいずれにあるとしても、取締役になりたいと思っているならば、いまこそ「付加価値を与えることができる」と周囲に知ってもらう時だ。あなたが役に立つ人物であると、人々に認識してもらうことを目指そう。

 自分の適性を示すには、経営者レベルの高度で戦略的な会話をする能力をアピールしなければならない。そのためには、情報を求め、対話を行い、相手の思考プロセスに挑むという、積極的な傾聴が必要だ。

 上場企業のCFOで、17年間にわたって7つの取締役を務めてきたミッシェルは、取締役会のメンバーと一緒にいる時は「『この人はわかっている。自分のビジネスや他のビジネスについて、真に戦略的な思考を持っている』と思われるような会話の進め方を知っておくべきだ」と助言する。

2. 取締役会の情報に触れ、接点を持つ

 取締役会にはさまざまな種類があり(非公開企業、小規模の公開企業、大規模の公開企業、非営利団体など)、それぞれのタイプによって、焦点、影響力、取締役として必要とされる能力は異なる。取締役候補として自分の価値を示すには、これらの違いを理解しなければならない。また、自分がどの取締役会のメンバーになることに最も興味があり、どの取締役会に最も大きな付加価値を与えられそうかを判断するためにも、事前の調査が欠かせない。

 このような知識と経験を得るには、3つのステップがある。

 1つ目は、自分の既存のネットワークの中から取締役を務めている人を探し、彼らの経験や意見を聞く。そのような知り合いがいない場合は、アフィニティグループ(類似性を持つ少数の集団)を通じて探したり、知り合いに現職の取締役を紹介してもらったりするとよいだろう。

 また、『ディレクターズ・アンド・ボーズ』『ディレクターシップ』『プライベート・カンパニー・ディレクター』などの取締役会関連の雑誌を読み、さまざまな種類の取締役会の関心や活動を知ることもできる。

 2つ目は、取締役会の有効性を追求する専門組織に参加することだ。全米取締役協会(NACD)、フィフティ・フィフティ・ウィメン・オン・ボーズ、エグゼクティブ・リーダーシップ・カウンシル、ブラック・コーポレート・ボード・レディネス・プログラム、ブラック・ウィメン・オン・ボーズ、アフリカン・アメリカン・ディレクターズ・フォーラム、ウィメン・コーポレート・ディレクターズ、オンボーディング・ウィメン、ディレクター・ダイバーシティ・イニシアティブ、プライベート・ディレクターズ・アソシエーションなど。これらの組織は、取締役会に関連する問題を認識し、注視するのに役立ち、イベントを通じて素晴らしいネットワーキングの機会を提供してくれる。

 3つ目は、自分の会社の取締役会と交流の機会を持ち、取締役会との接点をつくることだ。取締役会に出席したり、プレゼンテーションを申し出たりする。筆者がインタビューしたある取締役は、会社の経営幹部を務めていた7年間、すべての取締役会に出席し、取締役会の委員会のメンバーを務め、委員長と非常に密接に働いた。事業部門のトップとして取締役会に出席したこともあったという。

 このような経験はいずれも、自分がどのように、そしてどの領域で付加価値を与えられるかについての考えが明確になり、取締役になる機会を引き寄せるのに不可欠な人脈と評判を築くのに役立つ。