3. 自分自身の最高の擁護者になる
取締役になりたいならば、声高に自分を擁護する必要がある。友人、家族、同僚、知人などに、企業の取締役に興味があること、自分はどのようなタイプの取締役会に適していると思っているか、なぜ興味があるのかを伝えよう。
これらの要素から「取締役になる準備はできている」というあなた自身のストーリーができる。このストーリーをあらゆる人と共有することで、人々があなたを支持し、取締役の席が空いた時に思い出してくれる可能性が高まる。
筆者が話を聞いた取締役は、極めて慎重に自分の関心を伝えたと強調した。22年間で5つの取締役を務めたCEOのビクトリアは、「(特定の会社の)取締役になりたいので、助けてもらえますか」というように取締役の地位を直接求めるのは得策ではないものの、何らかの形で自分の関心を示すことが必要だと話した。
たとえば、「何の仕事をしているのですか」と聞かれたら、「私は○○(会社名)のITディレクターで、複数の非営利団体の役員を務めています。民間企業の取締役になることで、サイバーセキュリティの専門知識を共有する機会を探しています」などと答えるのがよいだろう。
4. ネットワークを構築し、大切に育てる
筆者がインタビューした取締役は、ネットワーキングが取締役になるためのカギであると強調した。なぜならば、新しい取締役を探して配置するというのは、本質的に社会的な活動だからだ。
取締役になることを望むならば、適切な人々にあなたを知ってもらい、あなたについて肯定的な発言してもらうことが欠かせない。そして、あなた自身も彼らの経験から学び、たとえ何年も一緒に仕事をしていなかったとしても、ネットワークを通じて良好な関係を維持することが必要だ。
弁護士で取締役会のメンバーでもあるエイプリルは、取締役になるには「リクルーターと取締役会の既存メンバーが誰を知っているか、それ以外に誰が新たな取締役の候補者を知っているか、そして人々が候補者についてどう言っているか」が重要だと話した。
また、上場企業のCFOであるミッシェルは、次のように言った。「自分のビジネスの分野で優れているだけでは十分でないことを学んだ。自分の分野以外の人々に自分のことを知ってもらわなければならず、私が彼らを知るだけでは十分ではなかった」
あなたのネットワークには、戦略的なキャリアの決断を導き、促してくれるメンターやスポンサー以外に、リクルーター、サーチ会社、取締役の席を見つける手助けをしてくれる別の取締役が含まれていなくてはならない。
筆者が話を聞いた取締役は、専門組織に参加して取締役教育を受けたり、ネットワーキングイベントに参加したりしたことは、人脈を築き、取締役会の不文律を学び、キャリアを形成し、取締役の地位を獲得するために非常に役立ったと述べている。
最後に、新しい人間関係を築き、ネットワークを広げることは楽しいことだが、これまでの人間関係を大切にすることも重要だ。誰もが、あなたの次の推薦人になる可能性があることを忘れてはいけない。
エイプリルは、空席の出た取締役会から声がかかった理由の一つは、20年前の同僚からの推薦だったと教えてくれた。筆者がインタビューした取締役の複数が、相手を大切に扱い、長く続くポジティブな印象を残し、必要であれば関係を修復することの重要性を指摘した。自分のネットワークを大切に育てることで、人々があなたを次の取締役と認識しやすくなるからだ。
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知識やスキル、人脈があれば、望むチャンスをつかめるという時代ではない。自分の価値を真摯に示し、取締役会に触れ、自分自身を擁護し、ネットワークを大切に育てることで、時代遅れのアプローチの先を行くことができる。重要なのは、もはや何を知っているかでも、誰を知っているかでもない。誰があなたを知っていて、彼らがあなたについてどのように言っているか、である。
"4 Strategies to Secure a Corporate Board Seat," HBR.org, December 14, 2022.