一方、ウーバーとリフトはこれらと同じツールを用いて、異なることを実現する。配車と運転指示の精度を高めるのではなく、まったく新しい配車システムを生み出したのだ。信頼性の高い運転指示と、広く普及しているモバイル機器があれば、誰でも配車サービスを提供できることに彼らは気づいた。

 プロの運転手に匹敵しうるスキルを持つ人の数は数倍に増えた。5年前、米国内のプロのタクシー・リムジン運転手は約20万人であった。現在では、ウーバーの運転手だけでもこの10倍以上いる(米国内で約350万人)。

 だが、この大幅に増えた労働力をまとめるには、セキュリティ、位置追跡、価格設定、配車やその他さまざまな部分でさらなるイノベーションが求められた。システム全体が変わる必要があったわけだ。

 同様に、新しいジェネレーティブ言語モデルによって、機械は近いうちに、アイデアを読みやすく、文法的に正確な段落群に書き出す作業を代行できるかもしれない。これにより、何百万人もの人々が上手に文章を書けるようになる。文法や言葉遣いをチェックする能力で生計を立てている人々は、競争に悩まされる可能性がある。AIが全国民の書くスキルを向上させるからだ。

 AI地図が優れたタクシーだけでなくウーバーを生んだように、AIによる文章生成もシステムに変化をもたらすだろう。これらの大規模言語モデルによるシステムソリューションがどのようなものになるのか、あるいはどのようなビジネスモデルが可能になるのか、まだわからない。だが、明瞭かつ効果的に書く能力を多くの人に与えることで、誰がどの仕事を遂行できるかに影響が及ぶだろう。

 特定のクリエイティブな作業を人間よりもうまく迅速に行うAIツールは、チャットGPTだけではない。同じくオープンAIがリリースしたDALL-E(ダリ)は、画像を生成する。飛行機の中で携帯電話で遊ぶ猫の画像を描くよう頼めば、DALL-Eは数秒で描いてくれるはずだ。グラフィックデザインを大規模に行うことが可能になる。高校でのプレゼンテーションでは、画像が豊富に使われるようになるかもしれない。

 具体的にどのようなシステムソリューションが可能になるのかはここでも不透明だが、何百万人もの人々が画像を作成・処理する能力を向上させることで、経済に多大な影響が及ぶだろう。

 こうしたAIの最近の発展は、仕事に直接的な影響が及ぶ人々、そして適応に苦労する人々に対し、苦しい時期と経済的な痛みを確実にもたらすことになる。経済学者が婉曲的に言う「適応コスト」である。

 しかし、この状況は誰にも止められない。テクノロジーの前進は続くのであり、私たちは新たな能力を社会のために役立てなくてはならない。そのためには、これらの新型ツールでどのような新しいシステムをつくり出せるかを問う必要がある。

本記事は、アジェイ・アグラワル、ジョシュア・ガンズ、アヴィ・ゴールドファーブ、およびチャットGPTによって執筆された。そう、チャットGPTが執筆を手伝ってくれたのだ。筆者らが草稿を書き、チャットGPTに「この小論文を、さらに面白くなるよう書き直して」と頼んだ。それが実行されたのである。AIが参加していない論考をお望みの方は、人間による新著Power and Prediction: The Disruptive Economics of Artificial Intelligenceを参照されたい。


"ChatGPT and How AI Disrupts Industries," HBR.org, December 12, 2022.