
人は運命的なものに惹かれる
オンラインでジュエリーの買い物をしている時、その会社のブランド紹介のウェブページに、材料となる金鉱が地質学者である創業者のハイキング中に偶然発見されたと書かれていたとする。意図せず発見された金鉱について知ったことは、あなたがそのジュエリー会社で買い物をしたいかどうかにどう影響するだろうか。
ある先行研究によれば、人は努力を重視する傾向があるため、金鉱が意図的に発見されていれば、そのジュエリー会社での買い物により興味を持つ傾向がある。しかし、その研究は、製品づくりに費やされた労力を調査したもので、すでに存在する資源を発見した労力について調査したものではない。
筆者らが行った新たな研究(『ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・サイコロジー・ジェネラル』のオンライン版で発表予定)で、意図的ではない発見であることを伝えると、消費者の選好が高まることがわかった。その理由は、意図的ではないこととはつまり、運命的なものであるととらえられるからである。
発見の役割
意図せぬ発見の効果を調べるために、まず消費者に上記のような架空のジュエリー会社のホームページを読んでもらった。そこには、創業者である地質学者が、すべての原材料となる金鉱を発見した経緯が書かれている。
あるグループが読んだページには、金鉱は意図的に発見されたと書かれ、別のグループが読んだページには、金鉱が意図せず発見されたと書かれていた。そして、3つ目のグループが読んだ同じブランドの紹介文には、金鉱の発見についての詳細は書かれていなかった。
ブランド紹介に金鉱が意図せず発見されたと書かれていた消費者は、金鉱が計画的に発見されたと書かれていた消費者や、金鉱の発見についての説明がなかった消費者よりも、そのジュエリー会社での買い物に興味を持つことがわかった。後者の2グループは、その会社で買い物をすることへの興味に差はなかった。
この傾向は、ソーシャルメディアのユーザーを対象にした調査でも見られた。フェイスブックの「A/Bテスト」機能を使って、4000年前のメソポタミア時代につくられた石版を展示する大学博物館の広告を2種類用意し、そのうちの一方をユーザーに提示した。考古学者が意図せず石版を発見したという広告を読んだユーザーは、意図的に発見したという広告を読んだユーザーよりも、展示を紹介する博物館のウェブサイトをクリックする確率が高かった。
つまり、意図せぬ発見は予期せぬ出来事であることから、
マーケターにとっての意味
このような消費者の選好を理解することで、マーケターにとって新たな可能性が開かれる。最も単純なレベルでは、製品の物語に意図せぬ発見が含まれることを消費者に伝えることで、製品に対する選好が高まることが、筆者らの調査で示唆されている。消費者向け製品のほとんどは天然資源を使用している。製品の構成要素を入念に調べて発見の物語を見つけることには価値がある。
また、博物館やオークションハウスなど、歴史的な資料を扱う組織のマーケターにとっても、この研究が役立つことは明らかだ。発見は、すべての芸術品の歴史に存在する要素であり、物語にそれを含めることで、展示の入場者数やオークションの売上げを増大させることができる
このように、意図せぬ発見であることを伝えることは、対象物自体の性質を変えることなく、組織にとっての価値を創出することができる。
"Research: Consumers Value Fate in Marketing Narratives," HBR.org, December 21, 2022.