組織に広がるシニシズムの影響
テクノロジー業界で働く企業幹部にとって、マイクロソフトのCEO職といえば、誰もが夢見る憧れの役職のはずだ。しかし、2014年は事情が違った。
当時のマイクロソフトは成長が滞っていた。スマートフォンやその他の新しいテクノロジーに関して、当初は他社をリードしていたが、その優位を維持できず、アップル、グーグル、アマゾン・ドットコムに市場シェアを奪われていた。マイクロソフトは古びて感覚のずれた、言わば迷走している巨大な船のようだと評価されていたのだ。
『ブルームバーグ』の記者を務めていたディナ・バスは、単刀直入に「なぜ、誰もマイクロソフトのCEOになりたがらないのか[注1]」と題した記事を執筆し、同社が直面していた問題を列挙した。サティア・ナデラがCEOに就任したのは、この記事が掲載されてから5日後のことだった。