なぜチームが必要なのか
優秀な人材さえ揃えば、チームは高い成果を上げられるのだろうか。優秀な人材といわれる人たちの成果は、本当にその人の力だけで達成できたものなのだろうか。
ウォールストリートにある78の証券会社に所属する1000人以上のエクイティ・債券アナリストを対象にしたハーバード・ビジネス・スクールのボリス・グロイスバーグらによる研究[注1]がある。研究対象となったアナリストは、さまざまな業界でクライアントの投資判断の補助を行っており、機関投資家の評価をもとに毎年発表されるランキングの上位に入るような人材だ。トップクラスの成果を出しているアナリストは、より条件のよい企業へ移るといった理由から、毎年平均約12%が転職している。しかし、彼らの転職先での業績は、元の職場よりも低下する傾向にあり、転職による低下効果は統計的に最低5年継続する。
なぜ優秀な人材にもかかわらず、このような結果が出たのだろうか。実は、この研究の中で、転職先でも業績の下がらなかった人たちが一部存在した。その共通項を調べたところ、個人ではなく、「チーム全体」で転職していたというものだった。