縦割り型の目標設定が
大きな目的を見失わせる

 マーケティング・アナリティクス・ソフトウェアを手がける急成長企業テクコ(実在の企業がモデルだが設定を変えてある)のリーダーたちは不可解な問題に直面していた。セールスチームとインプリメンテーション(実装支援)チームがおのおのすべての目標を達成していたにもかかわらず、多くの新規顧客が重大な不満を抱いていたのだ。

 経営陣がこの問題を掘り下げたところ、どの部門もチームごとに業務の成果を測定してはいたが、全体の整合性を取るインセンティブがなかった。つまり、各顧客の微妙で込み入った要件に関する正確なアナリティクスを実現するために、ソフトウェアをカスタマイズし、予定時期までに稼働させるためのインセンティブが欠けていたのである。その結果、顧客は声高に不満を述べ立てていた。

 テクコは部門間のコラボレーションを早急に改善する必要に迫られていた。この解決策は、顧客満足度の向上だけに留まらない恩恵をテクコにもたらすと考えられた。筆者らが過去10年にわたって数百社と実施してきた研究や助言活動から判明しているように、部門間のコラボレーションは不安定な競争環境への対応、イノベーションの加速、売上増に寄与しうる。