2. いまの仕事は、自分の価値観に沿っているか

 自分の仕事における好きな要素を明らかにした後は、なぜそれらの要素に魅力を感じるのかを考えよう。この評価作業は、一人ひとりの価値観に照らして行うことが重要だ。

 価値観とは、自分の人生と仕事に関して何を重要と見なすか、という考え方のことである。仕事は、みずからの価値観に沿ったものであるべきだ。たとえば、ほかの人たちを助けることを重んじる価値観を抱いている人にとっては、仕事を通じて追求するミッションが重要な意味を持つだろう。人生における快楽を重んじる価値観を抱いている人の場合は、仕事で日々の業務を実行する時に味わう幸福感が重要だ。成功や権力の獲得を重んじる価値観の持ち主は、個人として何を成し遂げるかが重要になる。

 社会心理学者のシャローム・シュワルツは、多くの文化圏で共通する人間の中核的価値を10種類挙げている。自立、刺激、快楽、達成、権力、安全、順応、伝統、慈善、普遍性である。人がどの価値を大切にし、その価値に基づいてどのように行動するかは、その人が育ってきた文化的環境と、その人自身が下す判断によって決まる。自分が仕事のどの側面に満足感を抱くのかを知るためには、「価値観テスト」を受け、自分がどの価値を重んじているかを把握することも有益だろう。

 また、研究によると、人の価値観は時間を経るにつれて変わる場合がある。そこで、自分の価値観の変化を認識することも重要だ。たとえば、キャリアの初期には達成に重きを置く価値観を抱いていて、自分の個人的評価につながりやすい仕事の側面を楽しく感じていた人でも、年齢を重ねると、慈善の要素を大切にする価値観が強まり、ほかの人たちの力になれるような仕事の側面に満足感を抱くようになるかもしれない。価値観が変われば、仕事のどの側面を楽しく感じるかも変わるのだ。

3. 最終的に自分が何を達成したと言えるようになりたいのか

 死の床に就いている時、さらにオフィスで時間を過ごしたかったという人はいない。このような常套句を聞いたことがある人は多いだろう。しかし、実際にこの言葉が人にどれくらい当てはまるかは、上述の2つの問いと深く関係している。

 自分の価値観に沿った仕事をしようと思えば、日々行う個別の業務だけでなく、それらの業務を長年続けることの結果、つまり、自分が仕事上、どのようなレガシーを残すかについても考える必要がある。

 レガシーについて考える時は、人間に備わっている素晴らしい能力を活用し、引退後の自分になったと想像して、それまでの人生を振り返ってみるとよい。その時、自分がどのような仕事人生を送ったと思いたいのか。いま歩んでいる道は、自分が望むレガシーを築くことにつながるのか。そのレガシーは、自分の価値観に沿っているのか。このようなことを考えよう。

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 以上のように、自分の抱いている価値観と、現在の仕事のプロセスおよび結果が合致しているかという視点から、自分の仕事について考えてみよう。その際は、いまの時点で自分の仕事と価値観が合致しているかどうかだけでなく、将来どのような職に就けば、仕事に満足感を抱けるかも考えよう。

 いまのままで仕事と自分の価値観が合致し続けると思えるのであれば、現在のキャリアの道筋を歩み続ければよい。しかし、両者の食い違いが大きければ、いまとは異なる選択肢を検討すべきだろう。

 自分の価値観に沿った道をどうやって見いだせばよいか自信を持てない場合は、専門のキャリアコーチに相談するのも一つの方法だ。その時は、仕事と価値観を合致させる道を見つける手助けをすると、約束してくれるコーチに依頼するようにしよう。


"What Do You Like About Your Job?" HBR.org, January 27, 2023.