
仕事から得られる幸福感と満足感の違いを知る
コロナ禍をきっかけに、自分がなぜ働くのかをあらためて考えた人が大勢いた。その結果として職を変えた人は途方もない数に上る。「グレート・レジグネーション」(大退職時代)と呼ばれる社会現象が生まれたのだ。しかし、転職により、その人たちの仕事に関する幸福感や満足感が実際に高まったかはまた別の問題だ。
現在の仕事に不満があるという理由で仕事を辞めるのは、理にかなった行動に思えるかもしれないが、自分がどのようなことに対して幸福感を抱くのかを理解しなければ、新しい仕事でも再び同様の不満足な状況に陥りかねない。そこで、転職に向けて行動を起こす前に、まず自分がどのような仕事を好むのかを検討することに時間を割くのが賢明だろう。
具体的には、幸福感と満足感の違いを知ることから出発すべきだ。そして、自分が携わっている仕事のどの側面が、幸福感と満足感のどちらの感情と結びついているのかを検討しよう。そして、自分が仕事のどの側面に最も大きな喜びを感じるのかを考えてみることだ。
以下の3つの問いを手掛かりに考えれば、仕事において自分に最も大きな喜びをもたらせる要素が見えてくるだろう。
1. 仕事のプロセスか、 最終的な結果か、自分はどの要素に最も満足感を抱くのか
私たちは、「幸福」と「満足」の違いを区別することなく、この2つの言葉を使っていることが多い。幸福とは、望ましい結果を追求することによりポジティブな感情を味わう一時的な状態のことだ。一方、満足とは、長い時間を費やして達成した結果に対してポジティブな感情を抱く状態のことである。
この2つの感情は、仕事に関する2つの異なる要素と関連している。その2つの要素とは、日々行っている業務、すなわち仕事のプロセスと、努力によって実現する成果、すなわち仕事の結果である。仕事のプロセスは、日々の幸福感に影響を及ぼし、仕事の結果は、長期の満足感に影響を及ぼす場合が多い。
仕事のプロセスは、その人が抱く幸福感と結びついているため、日々の業務をどれくらい面白いと思えるかに影響する。自分の仕事を構成する特定の業務が好きな場合、人はその業務に取り組むことが楽しみになり、その業務に関連したスキルを磨こうというモチベーションも強まる。
自分の仕事を構成する多くの業務を不愉快だと感じている人は、そのような業務に嫌気が差すようになるかもしれない。一方、自分が根源的なやりがいを見いだせる業務をうまく実行できれば、とりわけ大きな幸福感を抱ける可能性がある。
仕事の結果は、自分が勤務している組織のミッションと切り離せない関係にある。そこで問うべきは、自分がそのミッションを大切に思えるか、そのミッションの下、自分の頑張りによって世界をよりよい場にできると思えるか、という点だ。自分が仕事を通じて有意義な目標を達成しようとしていて、その努力が進展していると感じることができれば、仕事への満足感が高まる。
研究によると、自分の仕事の結果に誇りを持つことができれば、仕事に対して長期にわたる満足感を抱けるようになる。時には不愉快な業務を行わなくてはならない日もあるだろうが、有意義な目標のためにその業務を実行しているのだと思えれば、モチベーションが湧いてくる。逆説的に聞こえるかもしれないが、有意義な目標のために、楽しくない業務を大量に行うと、幸福感は乏しくても、多くの満足感を抱けるのだ。
要するに、自分の仕事について考える時は、仕事がもたらす幸福感と、長期にわたる満足感の両方に目を向けることが重要だ。