そこで、次のようなアプローチを検討してみよう。

部下:「営業電話の記録をさらに一貫した方法で録りたいのですが、手伝ってもらえますか。きちんとしたデータに基づいて、顧客をフォローアップしたいのです」

あなた(リーダー):「よい考えです。喜んで手伝います。さらに一貫した記録にするためには、どのようなことをすればよいと思いますか」

 あなた(リーダー)が、あなたのアクションプランを示しているわけではないことに注目してほしい。そうではなく、何が必要で、何をアクションプランに含めるべきか部下に考えさせる余地を与えている。ハーバード・メディカル・スクールのキャロル・カウフマン助教授と、 Real-Time Leadership(未訳)の共著者であるデービッド・ノーブルは、HBR論文“The Power of Options”(未訳)で、同僚に「寄り添う」ことを提案する。これには部下たちに共感を示し、励まし、コーチングをして、自分で考える余地と、自立性を感じる機会を与えることが含まれる。

 だからといって、リーダーがインサイトを示したり、リソースへのアクセスを助けたり、壁にぶつかった部下の問題を解決したりしてはいけない、というわけではない。部下たちが行き詰まって、決断を下すのを手伝ってもらったり、方向性を示してもらったり、場合によっては困難そのものから恩恵を受けたりする場合は、リーダーが「乗り出す」必要があるかもしれない。ただ、リーダーがせっかちだったり、確信がなかったり、リスクを避けたりしたい、あるいはコントロールしたくて仕方がないために乗り出すなら、自分の欲求を満たしたいがために、部下たちの熱意を冷ますおそれがある。

 The Advice Trap(未訳)の著者であるマイケル・バンゲイ・スタニエは、マネジャーたちに、「自分が正しくて、最高のアイデアを持っていることと、部下が独自のアイデアを出し、自分で考え、自分のインサイトに主体性を持つ機会を与えること」のどちらが重要か考えるよう促している。

 もし、部下たちに自分のプランを持たせたいなら、彼らはリーダーのサポートを得ながら、次のステップを自分で考えなくてはいけない。

 筆者はソフィー・リーゲルとの共著Go to Help: 31 Ways to offer, ask for, and accept help(未訳)で、自分でプランを考えさせるために投げかけるべき10の質問を紹介している。

1. 具体的に聞く:「次は何をする計画ですか」
2. ポジティブな面を聞く:「このプロセスですでにうまくいっていることは何ですか」
3. 同意を得る:「ここにはどのようなチャンスがありますか」
4. アイデアを問う:「先に進むためにはほかに何が必要ですか」
5. 現実的になる:「これを進めるために、断念すべきことはありますか」
6. コラボレーションに前向きになる:「ほかに誰と話す、協力する、連携する必要がありますか」
7. メンタルを整える:「あなたの現在のマインドセットはどのような状態ですか」
8. 追跡的になる:「進捗をどのように測定していますか」
9. 優先順位をつける:「最初にどのステップから取り組むと、ほかが進行できますか」
10. 仲間に加わる:「ほかにどのような手伝いができますか」

 あなたの部下たちは、これらの質問にすぐに、あるいは簡単には答えられないかもしれない。答えを考え抜くのに少し時間がかかるかもしれない。もし、部下たちがもう少し指示的なものを必要としていると感じたら(特に、コミットメントや創造性よりも確実性が重要な場面では)、部下たちと一緒に、あるいは部下たちのために、質問に答えてもよいだろう。

 たとえば、あるタスクに初めて取り組む人に「先に進むためには、ほかに何が必要ですか」と聞くのではなく(彼らにはまだわからないだろう)、「これ以外に、先に進むために必要なのはこれです」と教えてやることがよい支援策になるかもしれない。

 アイルランドのことわざに、「頭であれこれ考えているだけでは、畑は耕せない」というものがある。あなたが部下たちのアクションプランづくりを助け、その実践をサポートすれば、彼らは目標達成への道筋をより明確にして、より注力できるようになるだろう。


"Coaching a Direct Report Who Asks for Your Help," HBR.org, February 21, 2023.