消費者(Consumer)

 優れたブランドや製品は、ブランドのエバンジェリストやサポーターを自然に獲得できることが多い。その結果、消費者によるオーガニック投稿や盛り上がりが生まれ、消費者自身がコンテンツを生成(UGC)し、うまくいけば人気を集めることができる。

 時には、これが全く意図的でないこともある。たとえば、飲料ブランド「オーシャンスプレー」は、消費者がスケートボードをしながら同社のクランベリージュースを飲む動画を撮影したことで、自然に注目を集めた。

 消費者が参加して広めてくれることを期待して、ブランドが独自のチャレンジをすることもある(ブランド独自のハッシュタグを使用する)。たとえば、前述のチポトレのチャレンジ(#ChipotleLidFlipChallange)では、6日間で10万件以上の動画が作成され、1億400万回以上再生された。このチャレンジは、アプリをダウンロードして注文する人が増えるなど、ティックトック以外でのダウンストリームの行動も促した。

クリエイター(Creators)

 2023年、インフルエンサーとクリエイターはソーシャルメディアを支配しており、この時代のスポンサーであり、オピニオンリーダーでもある。体験談を投稿したり、チャレンジに参加したりする消費者とは異なり、インフルエンサーは習慣的に興味深いコンテンツを投稿し、他のソーシャルメディアユーザーの注目を集め、フォロワーを増やす。

 クリエイターが抱えるフォロワーは、少ない人で数百から数千人、多い人だと数百万人に上る。フォロワーの数にかかわらず、クリエイターは活発なコミュニティを生み出すことができる。ブランドがコンテンツを認知させたい時は、たいていクリエイターと契約して投稿してもらい、閲覧数を稼ぐ。

 クリエイターとブランドは、投稿ごとの支払い、収益の分配、無料製品の提供など、さまざまなマネタイズの関係を築いている。この関係は有料だが、フォロワーはクリエイターとの親密なつながりを感じ、クリエイターからの推薦はブランドではなく友人からの推薦のようにとらえるため、ブランドが「オーガニック」な訪問者をより多く獲得するのに役立つ。

 この戦略を採用するブランドにとって重要なのは、自社にとってどのクリエイターが最も適しているか、どのクリエイターが製品を正当に宣伝・広告してくれるかを見極めることだ。

著名人(Celebrities)

 著名人はある意味、メガクリエイターといえる。多くのファンを抱えているため、フォロワーに影響を与えることができる。ブランドは長年、著名人にお金を払って広告やスポンサーの契約を結び、宣伝を担ってもらってきた。著名人と強い関係を持つブランドは、往々にして支持される。これはかつて「オプラ効果」と呼ばれ、オプラ・ウィンフリーが勧めるものは何でも流行した。著名人は、一般人に抱かれる関心と、PR能力により、著名ではないクリエイターよりもバズを起こせるがことが多い。

 D2Cの時代には、著名人の役割はさらに進化している。著名人が設立、あるいは運営するブランドも登場し、オネスト・カンパニー(ジェシカ・アルバ)、ファブレティックス(ケイト・ハドソン)、グープ(グウィネス・パルトロウ)、パターン・ビューティー(トレイシー・エリス・ロス)、スキムズ(キム・カーダシアン)、カーサミーゴス・テキーラ(ジョージ・クルーニー)、アビエイション・ジン(ライアン・レイノルズ)、ビーツ・バイ・ドクター・ドレー(ドクター・ドレー)などはその例だ。

 D2Cのアイウェアブランド「ワービー・パーカー」のニール・ブルメンソールCEOは、「ビジネスを始めるコストはかつてなく小さいが、ビジネスの規模を拡大するのはかつてなく困難だ」と言った。筆者らも同感だ。小売りの新時代において、ブランドはオーガニックマーケティングを「つくる」ために適応し、戦略を構築しなければならない。

 コンテンツ、消費者、クリエイター、著名人という4つのCのフレームワークは、オーガニックマーケティングを生み出すガイドとなる。ブランドは4つのCの一部、あるいはすべてを採用することで、成長と成功を促すことができる。


"How to Seed Organic Marketing in a Video-First World," HBR.org, February 22, 2023.