コンサルタントが提示すべきは、下のようなダイアグラムだ。

 ピラミッドのメタファーが、ビジュアルが表現しているものと合致している。2つの軸は慣例に沿っており、読み手がすぐに理解できる。X軸の業界は近い方から遠い方へ伸び、Y軸の専門性は低い方から高い方へ上がる。ピラミッドの形そのものも有効で、専門性の低いエキスパートに比べてトップレベルのエキスパートが希少であることがわかる。

 タイトルも効果的だ。「登る」や「ピラミッド」という単語によって、趣旨が理解しやすい。装飾したくなる誘惑にも負けず、ピラミッドは3Dでもなければ砂色でもなく、背景に砂漠の写真を使ってもいない。

アイデアの創出(左下の象限)

 この象限は多くの人にとって最も直感的ではない。あなたはアイデアを探究するために、データを使わないビジュアルを作成することがあるだろうか。アイデアが不明確な状態で複雑な概念を明確にするという考えそのものが探究と矛盾するように思える。
他の3つのタイプとは設定や使う媒体が異なり、これをビジュアライゼーションと考えにくいかもしれないが、実際は頻繁に使用している。ホワイトボードや包装紙に描くこともあるし、ナプキンの裏を使うのは昔ながらのやり方だ。

「アイデアの説明」と同様、概念的なメタファーや慣例に依存するが、オフサイトミーティング、戦略セッション、戦略会議、初期のイノベーションプロジェクトなど、フォーマルではない場面で行われる。目的は、組織再編、新たなビジネスプロセスの発案、意思決定システムの体系化など、データを使わない課題に対する解決策を見つけることだ。

 アイデアを探すことは1人でもできるが、共同作業が有効だ。デザイン思考も役に立つ。できるだけ多様な視点と視覚的アプローチを取り入れ、それを1つに絞り、磨くのだ。

 オースティン・デザイン・センターの創設者兼ディレクターで、『ひらめきをデザインする』の著者でもあるジョン・コルコは、オフィスのホワイトボードの壁を概念的で探究型のビジュアライゼーションで埋め尽くしている。「複雑なことをじっくり考えるために我々が使う方法だ」とコルコは言う。「スケッチを描くことは、曖昧さや不明瞭さを解決して、明快にする作業だ」

 チームをリードし、ブレストのセッションをうまく進め、クリエイティブ思考を理解することに長けたマネジャーは、この象限が得意なはずだ。

 マーケティングチームがオフサイトミーティングを開いているとする。高級市場参入の戦略案を経営陣に示す方法を考えている。ホワイトボードを使って1時間話し合い、市場移行戦略を発表する複数のアプローチとアイデアが生まれた(すべて消さずに残しておく)。最終的に、顧客を絞って1人当たりの購入額を上げるという重要なポイントを最もよく表していたアプローチがチームの賛同を得た。

 アイデアの創出のセッションでホワイトボードに書かれたラフスケッチが上図だ。もちろん、アイデアを探す上で生まれるビジュアルが、もっとフォーマルなデザインで、アイデアの説明として提示されることも多い。

『ハーバード・ビジネス・レビュー流 データビジュアライゼーション』

<著者> スコット・ベリナート
<内容紹介> 世界最高峰の経営誌『ハーバード・ビジネス・レビュー』、その公式サイト「HBR.org」やアプリ等で、ビジュアル・ストーリーテリングを牽引するシニアエディターが、持てる知識とノウハウをすべて詰め込んだ、データビズ決定版!

<お買い求めはこちらから>
[Amazon.co.jp][紀伊國屋書店][楽天ブックス]