そしてすぐさま、コストと他の変数との関係性が比較的弱いことに気づく。ビジネスクラスは料金が高いほど快適さが増す傾向があるが、それほど強くはない。自分の仮説が成り立たないことに驚いた。高い航空券はそれだけの価値がないかもしれない。何らかの判断を下す前に、他にどんなアイデアを試すべきかと考えることになった。

視覚的探究:探究的でデータ主導のビジュアライゼーションは、データサイエンティストやビジネス・インテリジェンス・アナリストの領域になりがちだが、新しいツールを得たことで一般的なマネジャーも視覚的探究に取り組み始めている。他の方法では得られない知見を生むことが多いため、試みるには面白いビジュアライゼーションだ。

 求めているものがわからないため、このタイプのビジュアルはプロットするデータが包括的になりがちだ。極端な場合、複数のデータセットや自動更新される動的なリアルタイムデータを組み合わせることもある。データを超越することさえあるかもしれない。

 政治学者で統計分析学者でもあり、現在は米プロバスケットボールNBAのボストン・セルティックスに勤務するデイビッド・スパークスは、視覚的探究を実践し、それを「モデルビジュアライゼーション」と呼んでいる。データビジュアライゼーションは実在するデータに焦点を当てる一方、モデルビジュアライゼーションはデータを統計モデルに適用し、特定の状況下で何が起きる「可能性があるか」を検証する。

 探究はインタラクティブ性に適し、マネジャーはパラメーターを調整してデータソースを注入し、継続的に視覚化を繰り返すことができる。データが複雑な場合は、ネットワークのクラスター性を示す力学モデルを用いたダイアグラムや、地形図など、専門的で特殊なビジュアライゼーションのタイプが適していることもある。

 ここでは、ソフトウェア、プログラミング、データマネジメント、ビジネスインテリジェンスのスキルが、見栄えのいいチャートを作る力よりも重要だ。ビジュアライゼーションの作成で専門家の力を借りることが最も多い象限である。第4章では、専門家と行う手法の1つであるペア分析について説明する。

 あるソーシャルメディア会社のマネジャーが、新たな市場を探すことになり、誰も気づかないチャンスを見つけたいと思っている。データサイエンティストに相談すると、セマンティック分析によって、テキストコミュニケーションという類似性に基づき、複数の業界の何千という企業をマッピングできるという。

 マネジャーはそのアイデアを気に入るが、自分ではできない。そのデータサイエンティストを雇い、一緒にデータセットを作成、調整して、何千もの企業をマッピングしたラフのビジュアルを作った。セマンティック分析によって、類似性のある企業が結び付けられ、類似性が高いほど結び付きが「強く」なり、より近くにマッピングされる。

 そしてできたのが、次のネットワークダイアグラムだ。

 業界ごとのクラスターがわかりやすく表示されている。近接するクラスター間の空白は、ある業界を別の業界につなげる機会を示す。データが双方の類似性を示しているにもかかわらず、そのギャップを埋める企業がまだ現れていないということだ。

 マネジャーはソーシャルメディアとゲームの間の空白が狭いことにすぐ気づいたが、「キャンディークラッシュ」のゲームをしている彼にとっては驚きではない。だが、教育やバイオ燃料など他の業界との間にも空白があることがわかった。ソーシャルメディア会社にとって、新しい市場になるかもしれない。

『ハーバード・ビジネス・レビュー流 データビジュアライゼーション』

<著者> スコット・ベリナート
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