
転職したいが、給与は下げたくない
こんな時どうすべきか
多くのプロフェッショナルが、新しい職務、あるいはまったく新しいキャリアへの移行を夢見ている。もちろん、新しい業界で自分をアピールするのは、特に直接関連する経験がない場合、難しいかもしれない。しかし、自分の挑戦を周囲に納得させるという障壁以外にも、大きな問題がある。収入面についてだ。
中堅やベテランのプロフェッショナルは、十分な経験や年功を積んでおり、相当の給与を受け取っている。たとえ手取りの給与がそれほど高くなくても、住宅ローンや学費などを理由に、生活を大幅に切り詰めずに済むよう、ある程度の収入が保証される「特別待遇」から抜け出せないことはよくある。しかし、新しいキャリアをスタートさせるためには、一時的な、あるいは分野によってはそれよりも長い期間の収入ダウンが必要になることが珍しくない。
拙著Reinventing You(未訳)でも紹介しているように、転職したいが、給与が下がるのは受け入れられないという場合には、次の4つの対処法を試してみてほしい。
社内で異動するか、既存の仕事を改革する
いまの仕事に不満があるなら、辞めるしかないと思いがちだ。しかし最近、そうではないケースも増えてきている。雇用主は、従業員の離職が最大で彼らの年俸の2倍という莫大なコストになることを長年の経験から認識してきた。特に2021年には退職が急増し、自主退職者が過去最高の4700万人となる中で、人材確保がいっそう重視されている。
会社を辞めなければならないと考えるのではなく、社内異動を模索することから始めてみてはどうだろうか。そうすれば、たとえ経験不足の職務に変わったとしても、現在の給与や年功序列による地位を維持できる可能性がはるかに高くなる。
人間関係の強さにもよるが、まずはマネジャーや人事担当のパートナーから少しずつ状況を聞くことから始めてみるのもよいだろう。社内異動が無理でも、いまの仕事にもっと魅力的な要素を加える方法が見つかるかもしれない。たとえば、コミュニケーション能力を高めたいのなら、チームでのプレゼンテーションの機会を増やしたり、社内報や業界誌に寄稿したりすることを提案してもよいだろう。
興味のある仕事をよく確認する
キャリアチェンジを希望しているのなら、新しい職業について明確なビジョンを持っているかもしれない。筆者が調査したある女性は、デスクワークの仕事を辞め、フラワーアレンジメントという美と創造性にあふれた職業に就くことを夢見ていた。彼女のキャリアコーチは、興味のある仕事についてよく知るために、ジョブシャドーイングで生花店の店員に1日同行することを提案したが、彼女は不服を唱えた。なぜそのようなことをわざわざするのか。花が好きだし、それが夢だとわかっているのに、と。
しかし、キャリアコーチが強く勧めるため、彼女は親身になってくれる生花店に連絡して訪ねた。ところが、彼女は結局、昼休みに帰ってしまった。それはまったく予想外の理由だった。生花のアレンジメントをするには、低い気温の中で作業しなければならないことを彼女は知らなかったのだ。
違う仕事に就いたらどのようなものかと空想するのは簡単だ。しかし、転職に踏み切る前に、実際にその業界で働く人のインタビューを読んだり、半日か1日仕事に同行するジョブシャドーイングをしたり、その仕事に従事する人の体験記を読んだりして、本当に自分が楽しめる仕事なのかどうかを検証することが重要だろう。