近しい人に話をする

 仕事の改革に関する研究をする中で、筆者が発見した皮肉な出来事の一つが、多くのプロフェッショナルが最も協力的な存在だと思っている人々、つまり家族や親友が、実際には彼らの計画に対して最も批判的だと判明したことだ。家族は自分の利益が脅かされる(あなたの収入が減れば、直接的な犠牲を払わなければならない可能性がある)というだけでなく、あなたに傷ついてほしくないという純粋な善意の気持ちがあるからかもしれない(「もしうまくいかなかったら、どうするのか」という感情だ)。

 修羅場や確執を避けたいのであれば、あなたの決断に影響を受ける身近な人たちと、前もって協力的な会話をすることが重要だ。たとえば、こう切り出す。「私がほかのキャリアの選択肢を探求したいと思っていることは知っていますよね。行動を起こせば、いまと同じ収入を得られなくなる可能性がありますが、それについてどう思いますか。その道に進むのはよい考えだと思うなら、どうすればうまくいくか、アイデアや提案があれば教えてもらえませんか」

 妥協する方法が見つかるかもしれない(「家を売る。ただし、子どもたちが高校を卒業してからにする」など)。あるいは、相手が想像以上に協力的かもしれない(「あなたは非常に苦しんできたから、何があってもその仕事は辞めたほうがよい」など)。

時間軸を広げる

 多くの人は、キャリアチェンジはオール・オア・ナッシングだと考えている。しかし、それは私たちが持っている重要な手段を軽視している。つまり、夜間や週末を活用することだ。

 筆者が拙著Reinventing Youで紹介したパトリシア・フリップという美容師の女性は、10年かけて生き方を変え、プロの講演家として成功した。彼女は、すぐに仕事を辞めて講演者になる夢を追いかけるという誘惑(経済的に破滅する可能性もある)に陥ることはなかった。何年もかけて技術を磨き、ネットワークを構築し、評判を高めた。さらに、美容業で得た資金を、スキルアップとウェブサイトや講演者としての自己紹介動画など仕事のリソースの構築に投資した。

 その結果、彼女は収入不足に悩まされることはなかった。10年間のサロンの賃貸契約が終了すると、ビジネスをたたみ、新しいキャリアに踏み出した。そして美容業で得ていた以上の収入を得るようになった。

 せっかちな人はイライラするかもしれない。しかし、時間軸を広げることで、すぐさま資金難に直面することなく、商品と市場の適合性を見極め、顧客基盤を構築し、新しいビジネスやキャリアを成長させることができる。学び、試す自由が変革をもたらすのだ。

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 キャリアチェンジはけっして簡単ではなく、経済的な責任に阻まれると不可能に思えるかもしれない。しかし、上記の戦略を実行することで、自分のキャリアの道のりをコントロールし、軌道修正することができる。そして最終的には、望む場所にたどり着くことができるのだ。


"How to Make a Career Pivot - Without Taking a Pay Cut," HBR.org, February 28, 2023.