国内だけでなく、海外でもBaaSを積極的に展開

――すでに人材サービスのパーソルテンプスタッフなどがみんなの銀行内に自社専用の支店を開設し、金融サービスを提供しているほか、マルエツやカスミなどのスーパーを展開するユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)が、自社のスマホアプリとみんなの銀行のBaaSを連携することで合意しました。

永吉 U.S.M.Hさんは、お客様が自分のスマホで商品バーコードを読み取って専用レジで決済するセルフスキャン型の買い物アプリ「Scan&Go」を運用されていますが、当行のBaaSを活用して、A2A(Acount to Acount)決済の機能を加える予定です。

 A2A決済とは、みんなの銀行に口座を持つユーザーがアプリ決済した場合に、口座から代金が即時に引き落とされ、提携先事業者の口座に直接入金される機能です。クレジットカードやキャッシュレス決済の事業者、決済代行事業者を介さないので、入金までの時間がかからず、手数料も低く抑えられます。

 2023年4月以降、当行のBaaSを利用して金融サービスを提供される事業者が目に見える形で増えていきますので、BaaSの価値をより実感していただけると思います。

――2022年11月には、みんなの銀行の基幹システムを開発・運営するゼロバンク・デザインファクトリー(FFG子会社)が、アクセンチュアと共同開発したフルクラウド型の銀行システムを、国内外の金融機関および銀行サービスへの参入を目指す非金融事業者に向けて提供を開始しました。

永吉 これはみんなの銀行向けに開発したシステムをベースとしており、金融機関や非金融事業者が、銀行システムを短期間でクラウド上に構築し、個人のお客様にデジタルネイティブな金融サービスを提供することができます。

 当行と同じように、すべての銀行サービスをスマホ上で完結させることができ、口座開設から預金、為替取引、ローンの借り入れなどを(わずらわしさや抵抗感なく)フリクションレスで実現できます。入出金や利息・手数料計算などの勘定処理、預金者の利用状況などのデータを可視化する分析エンジンなども組み込まれています。

 当行ではシステムの内製化を進めており、約200人のスタッフのうちの半数がシステム人材です。顧客企業のビジネスをよく理解し、ニーズをくみ取って内製化チームと一体となって最適なシステムをご提案できるのが、当行の強みです。

 これから1〜2年は、しっかり地に足をつけて、BaaS事業を展開していきたいと考えています。

 フルクラウド型の銀行システムの外部提供については、アクセンチュアとしても積極的に支援していきます。銀行システムの根幹である勘定系だけでなく、顧客接点となるフロントサービス、コールセンターのクラウドシステム、それを裏側で支える業務システムなどがコンポーネント化されており、それらがシームレスにつながることで顧客体験を向上させます。この仕組みは一括で導入することも、コンポーネントごとに活用することも可能です。

 すでに私どもにも国内外問わず銀行や非金融事業者から問い合わせをいただいています。アクセンチュアのグローバルネットワークを活かして、特に海外における顧客開拓で支援できる部分が大きいと考えており、個人向けの金融サービスのニーズが高まっているアジアや中東地域、あるいは銀行の新陳代謝が活発な米国などにおいても、ソリューション提供の事業拡大をサポートしていきます。

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