自分の「テル」を自覚する

 ポーカーで「テル」とは、持ち札がよいか悪いかを示唆する振る舞いのことだ。あなたの「テル」、つまり感情や意思を表してしまう身体的または行動上のヒントにみずから気がつけば、自分の反応をコントロールして、適切な場面でポーカーフェイスを保つ助けになるだろう。

 一日を通じていろいろな人と接する中で、さまざまなコンテクストにおける自分の行動を観察しよう。ナーバスな時や不安な時、怒っている時、ストレスにさらされている時に表れるパターンがあれば、メモしておくこと。それは髪の毛を触ったり、イスに座りながら体を前後左右に揺らしたり、他人と目を合わせないようにすることかもしれない。筆者のテルは、プレッシャーを感じると爪を噛む癖で、長年、それを抑える努力をしてきた。

 できれば、さまざまなシチュエーションで自分の姿を録画して、その映像を見ながら自分のテルを探してみよう。信頼するメンターや同僚に聞いて見るのもよいだろう。

自分のボディランゲージに意識を向ける

 ポーカーフェイスと言っても、冷たく平然とした銅像のように見られたくはないだろう。ポーカーフェイスの表情にも温かみがあったほうがよい。ゆっくり深呼吸をして感情を落ち着かせて、自分の表情から緊張が取り除かれることをイメージしよう。具体的には、あごを緩め、上あごから舌を離す。視線も柔らかくしよう。緊張や不安を感じると、つい目を細めたり、じっと見つめたりしてしまう。したがって、遠くの一点に意識を集中して、目の筋肉を緩めよう。

 ポーカーフェイスには、声の調節も含まれる。低音でゆっくりと話そう。怒りや不安を抱いていると、早口になりがちだ。横隔膜(下腹部)から発声すると、より深く、より響く声になる。会話を進めつつ、自分の立場を明かさない中立的なせりふ(「興味深いですね」「もう少し教えてください」など)を用意しておこう。

内なる感情の爆発は遮断する

 自己調整がうまくなるほど、自分を誇らしく思えるような感情表現が簡単にできるようになる。以下の簡単なテクニックで神経を落ち着かせれば、衝動的に反応するのではなく、落ち着いて対応できるようになるはずだ。

鎮静化するテクニック:100から始めて1まで数える。いまいる部屋で、特定の色のものを5つ見つける。拳を握ったり、開いたりする。

ビジュアル化:海辺や森など、穏やかで心休まる風景を思い浮かべ、自分がそこにいることを想像する。

寒冷曝露:氷水の入ったグラスを持つ。氷を口に入れる。冷たい水を顔にかける。

 覚えておいてほしいのは、ポーカーフェイスとは、感情を押し殺したり、ロボットのように振る舞ったりするものではないということである。重要なのは、自分の表情やジェスチャーに気を配ることで、効果的なコミュニケーションを図り、目標を達成することだ。どのような困難に見舞われても、冷静沈着を対応できる自分の力を信じよう。


"When - and How - to Keep a Poker Face at Work," HBR.org, March 06, 2023.