4. 過去の大胆な決断の中に、良好な結果を妨げる要因はあったか

 大胆な決断を下して満足している時は、楽観的にその過程を振り返りがちだ。しかし、判断の誤りや意図しない結果について、何が問題だったのかを理解すること、つまりリスクが生じるのを防ぐために、過去の決断を振り返ることには価値がある。

 リアナは、自分が下した決断を見直す中で、他の幹部には相談していたものの、下位のチームメンバーにさらに早く相談や報告をしていれば、彼らは大きな変化に適応しやすかっただろうと認識した。たとえば、シニアマネジャーを解雇した時は、彼の部下のマネジャー3人が容易にその役割を担えると思っていた。しかし、彼らは役割を円滑に移行させた経験もなければ、責任を取ることにも慣れていなかった。リアナは、みずからの大胆な決断の結果は明らかによいものであったと考える一方で、他の人は蚊帳の外に置かれたように感じていたかもしれない、あるいは実際にそうだったかもしれないと認識した。

5. 過去の事実から得た教訓を現在の決断に活かす

 過去の大胆な決断の中で、何がうまくいき、何がうまくいかなかったのかを明らかにすることで、過去を活かして「実践しながら学ぶ」ことができる。当然ながら、過去を検証しても成功が保証されるわけではないが、いつ、なぜ、どのように勇気ある選択をしたかを思い出すと、失敗を繰り返さないようになる。

 リアナは、過去の決断を検証することで、もし自分が取締役会を再編できたら組織はどうなるのか、また、協働的な方法で取締役会を導くにはどのような手順が必要なのかを想像する時間が必要であることに気がついた。長期的な変化のために短期的な不安定さを受け入れることはいとわないが、変化の可能性について他の誰に相談、あるいは報告すべきか、また暫定的な不安定さが組織の人々にどのような影響を与えるかを、慎重かつ徹底的に検討する必要があることを再認識した。

 リアナは、組織の現在のニーズを満たすために、現取締役会の変更が必要であると主張するという大胆な決断を下した。そして、外部のコンサルティング会社を活用し、取締役会を見直してメンバーの専門的な能力開発のための提案を行う意向を伝えた。

 取締役会は、組織が成長していることも、リアナが人員の大きな変更を行ったことも理解した。彼女はプレゼンテーションで取締役会にこれまでとは違う種類のリーダーシップが必要であることを強調した。業務は複雑化しており、取締役会メンバーの重要な専門知識や経験が前進する組織をサポートできる。リアナが主張すると、取締役会は彼女の計画を称賛し、承認した。

* * *

 たいていの人にとって、大胆な決断をすることは怖いものだが、興奮を覚えるものでもある。私たちは皆、自分の人生を自分でコントロールすることを望んでおり、大きな決断に自信を持って対峙することで、それが可能になる。

 ボールド・デシジョン・バロメーターを使えば、過去の決断における事実から学ぶことができる。それによってよい決断が保証されるわけではないが、思い切った決断をする際に感じるリスクや不確実性を軽減する内省を促し、そうした決断を可能にするのだ。


"Become More Comfortable Making Bold Decisions," HBR.org, March 06, 2023.