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思い切った決断をする時の不安と向き合う方法
思い切った決断を迫られたら時、あなたはどうするだろうか。
多くの人はそうした決断からは逃げ出したいと考える。思い切った決断は映画の中ならばよい見せ場になるが、現実の世界では、ストレスと不確実性という人間の脳にとって不快な2つの感情に覆われることになる。実際、研究によれば、私たちの脳はこうした不快感やストレスから逃れるために、将来の結果に対する不確実性を積極的に減らそうとする。
私たちが直面する大きく複雑な決断は、人生と未来に重大な影響を与える。そして、その決断を誇りに思うことも多い。筆者は最近、ポルトガルのビジネススクールで行った意思決定の講義で、学生たちにいままでで最高の決断を尋ねた。すると、「初めて住宅を購入したこと」「ある仕事を受け入れたこと」「離婚」「一人暮らし」「一人旅」など、大きく複雑な決断が次々と挙がった。
学生たちの答えは、筆者のクライアント企業の回答とよく似ている。「リスクを取って情熱に従ったこと」「結婚」「息子を産むと決めたこと」といったものだ。
不確実性が私たちを不安にさせるのであれば、なぜ多くの人は大胆な決断を懐かしく振り返るのだろう。そして、どうすればさらに楽にそうした決断ができるようになるのか。
思い切った決断をする時の不安と向き合うには、私たちが見落としがちな、示唆に富んだ情報の活用が効果的だ。その情報とは、自分の過去の決断である。私たちがこれまでにしたすべての選択は、将来の決断に役立つ情報を提供してくれる。過去の意思決定を振り返ることで、見逃しがちなパターンが見え、複雑でユニークな、現在と未来の問題を理解し、そして解決するための重要な視点を得ることができるのだ。
過去の個人的な意思決定を掘り起こすために、筆者が開発したのが「ボールド・デシジョン・バロメーター」(BDB、大胆な決断の指標)と名付けたプランニングツールだ。これは、過去に意思決定を行う際、不確定だった要素を特定し、検証するための一連のステップを提示するもので、不確実性を減らし、次に思い切った行動をする際の安心感を高めてくれる。
1. 決断すべきことを特定する
やっかいな問題を解決しようとする時は、概して多くの相反する情報を整理しなければならない。そこで、最初にすべきことは、どのような決断が必要なのかを明確にすることだ。
国際的な旅行会社のCEOであるリアナは、難しい決断に直面していた。自分を監督し、解雇することもできる取締役会の再編をすべきかどうかというものだ。現在の取締役会は前任者から引き継ぎ、彼女が就任した当初は協力的な世話役として素晴らしいチームだった。
しかし、就任から2年間で会社の国際事業を拡大したリアナにとっては、成長するダイナミックな組織を強化し、現在の取締役会にはないスキルや知識をもたらしてくれるチームが必要だった。ただ、その一方で、それを現取締役会に提案すれば、いっきに辞任に追い込まれる懸念もあった。
もちろん、取締役会をそのまま維持するという選択肢もあったが、行動しないことも決断であり、結果を伴う。慎重に行動することの意味を見極めることが、大胆に行動する意思の後押しになるかもしれない。
2. 過去の大胆な決断を検証する
過去に行った選択で、結果に心躍ったものを思い浮かべてほしい。どのような決断に迫られていたか。その決断に際して、あなたはどのような行動を取っただろうか。
リアナはCEOに就任してからを振り返り、組織のために実行した2つの大胆な変化を特定した。幹部の1人を解任したことと、組織の営利部門を非営利部門に転換したことだ。
そして、それぞれの決断を下す前にどのようなステップを踏んだかを思い返した。幹部のケースでは、問題の兆候を耳にし、それがその人物のリーダーシップに起因していると考えた。しかし、自分の憶測を証拠と照らし合わせて検証する必要があると考え、その幹部の所属する部署の財務状況を調べ、主要な補佐役から部署の監督について話を聞いた。
事業部の転換についての決断をした時は、リアナは自分が非営利組織についての経験が不足していることを認識していた。そのため、資金調達担当者や弁護士などの専門家に会い、知識を得た。
3. 検討中の大胆な決断と過去の決断には、どのような特性や類似点があるか
類似点を探すことで、一見ユニークで混沌としたものに秩序を与えるためのパターンを発見することができる。さらに、共通点を特定し、理解することで、経験則に基づく推測や仮説を立てることができる。これは、批判的思考や問題解決能力を養うだけでなく、熟知できている感覚が得られ、新しいことや大胆なことをする際の自信にもつながる。
リアナは、過去の2つの決断をした際に、専門知識を持つ人に相談したことを思い出した。また、大胆な決断をした後の組織の姿を想像することに時間を費やしていた。たとえば、幹部を交代することで短期的には不安定になるかもしれないが、長期的には組織の文化を改善することへの自身のコミットメントを示すことができると考えた。さらに彼女は、過去の2つの決断において、すべての人の長期的な利益と引き換えに、短期的には個人的にも仕事上でも不安定な状態になることを覚悟していたことを認識した。