失敗しない異業種ブランドパートナーの見つけ方
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サマリー:異業種企業との連携は、新技術に投資することなく、異なる分野でのプロモーションや新市場へのアクセスを可能にする。しかし、すべての連携がうまくいくわけではない。どうすれば、失敗を避けつつ、成功するパートナ... もっと見るーを見つけられるのか。本稿では、ソーシャルメディアにおける重複フォロワーの分析を用いて、異業種でポテンシャルの高いパートナーブランドを見つける方法を提案する。 閉じる

異業種連携の成功例と失敗例

 2014年、ウーバーとスポティファイは、画期的な異業種連携を開始した。ライドシェアと音楽ストリーミング配信は無関係に見えるが、ウーバー利用者がスポティファイを使って車内でかかる音楽を管理できるようにする連携は、両ブランドに恩恵をもたらした。両者とも新技術の開発に投資しなくても、異なる分野で互いにプロモーションできたり、新しい市場にアクセスできるようになったりしたのだ。

 同じようにクリエイティブな異業種コラボレーションとしては、ウォルト・ディズニー・カンパニーと人気化粧品M・A・Cコスメティックスの「アラジン」コレクション、家具販売大手イケアと玩具大手レゴグループがコラボした収納ボックス、エナジードリンクのレッドブルとアクションカメラのゴープロの共同プロモーションなどがある。

 もちろん、すべての連携がうまくいくわけではない。レゴは2014年、英石油大手シェルとの連携について環境活動家から非難を浴び、数十年に及ぶ数百万ドル規模の提携関係を解消した。また、米ディスカウント大手のターゲットと高級百貨店ニーマン・マーカスの共同ファッションラインは、当初は「見逃せないコラボ」と騒がれたものの、戦略的失敗という烙印を押された。どうすればマネジャーは、こうした高くつくミスを避けて、分野は違うがポテンシャルの高いパートナーブランドを見つけられるのか。

重複フォロワー分析の導入

 筆者らの最近の研究は、シンプルかつ効果的なソリューションを提供する。すなわち、ソーシャルメディアにおける重複フォロワーの分析だ。

 筆者らは2017~20年に500以上のブランド(航空会社、ラグジュアリーブランド、小売り、自動車、スポーツ、テクノロジー、ダイニングなど)の公式ツイッターのフォロワーデータを集めた。そして、このデータセットを使って、フォロワーの重複が多いブランドの組み合わせを探った。さらに、1000人以上の消費者を対象とした一連の調査に基づき、この定量分析で明らかになったブランドの組み合わせが、主観的に「相性がよい」と消費者に思われることを確認した。

 これは、ソーシャルメディアにプレゼンスを持つあらゆるブランドが簡単に再現し、自動化できるアプローチだ。無料で入手できるデータを見直すだけで、自社のカテゴリー内外のブランドのエコシステムにおけるユーザーの関心を把握し、消費者ベースが共鳴する可能性が最も高いパートナーを見つけることができる。

 たとえば、2020年の分析では、マクドナルドとコカ・コーラのツイッターフォロワーは100万人以上重複していた。これは両ブランドの総フォロワーの約30%にもなる。両社は長年にわたり良好な提携関係を築き、共通する顧客ベースをターゲットに無数の共同製品やプロモーションを展開してきたのは驚くべきことではないのだ。

 この分析方法は、連携相手候補の非対称性を把握するのにも役に立つ。たとえば、ラガービールの「ステラ・アルトワ」のフォロワーの半数以上が、高級ブランド「コーチ」をフォローしているのに対し、コーチのフォロワーでステラ・アルトワもフォローしているのは全体の4%にすぎなかった。このことは、この2つのブランドが連携すれば、とりわけステラ・アルトワにとって有益になる可能性がある一方で、コーチも中核ターゲットとは明らかに異なるニッチな層へのアクセスが得られる可能性がある。

 ソーシャルメディアのフォロワー分析は、ブランドがライバルへの理解を深めるのにも役に立つ。競合ブランドのプロダクトだけでなく、潜在的なパートナーブランドも含めた競争状況が見えるようになると、通常は得られない脅威やチャンスについてインサイトが得られるかもしれない。

 たとえば、「バドライト」と「シエラネバダ」は、どちらもビールのブランドだが、バドライトは食品や飲食ブランドと重複フォロワーが多く、シエラネバダは旅行や航空会社、テクノロジーブランドと重複フォロワーが多かった。自社と競合他社の顧客の好みや関心についてこの種のインサイトを得ると、ブランドマネジャーはより効果的なマーケティングコミュニケーション戦略を策定し、未開拓の共同ブランディングの可能性を発見できる。