2. その問題は我が社のステークホルダーにどのような影響を与えるか
この問いの答えは、よく考えて構築する必要がある。ステークホルダーの利害が衝突する可能性がある場合は、特にそうだ。気候変動から育児休暇まで、賛否両論がたちまち対立へと発展するトピックは非常に多い。
私の場合、誰よりも大切なのはファイザーの従業員であり、彼らの意見を最優先する。自分が無視されている、あるいは疎外されていると感じる従業員は、しばしば最もやっかいな敵対者になる。一方で、自分の声に耳を傾けてもらえているとか、自分のことを理解してもらっていると感じる従業員は、会社にとって最高の大使になってくれる。
3. どのような関わり方を選ぶとよいか
当初は明らかではないかもしれないが、対応を示す方法やアクションには、いつも複数の選択肢があるものだ。「この意見書に署名してほしい」「この公開書簡に貴社のCEOの名前を加えてほしい」「今日中に返事をくれ」と迫られた時、他人のアジェンダや計画に囚われてはいけない。自分なりに戦略を練り、それに従おう。そして、その見解を最も明確に示すことができるメッセージとツールを選ぼう。
私が気に入っているのは、2020年米大統領選の大統領候補テレビ討論会後、ファイザーCEOのアルバート・ブーラが従業員向けに送ったメモが、大きな評判となって、社会に伝わった経験だ。つまり、企業トップが社内向けにメッセージを送り、それを広報が社外に公表していく。こうすれば、メッセージの内容やリーチを、私たちが決めた条件でコントロールし、実行することができる。
4. 沈黙の代償は何か
この問いの答えは、ほかの4つの問いよりも重視されることが多い。あるイシューが、会社のパーパスに必ずしも一致していなかったり、ステークホルダーの見解がはっきりしていなかったりした場合でも、沈黙の代償が著しく大きくなる場合がある。人種差別や同性愛嫌悪、反ユダヤ主義など人間性が関わるトピックでは、沈黙は許されない。
たとえば、2017年8月にバージニア州シャーロッツビルで白人至上主義者の集会が開かれた時、多くの企業が声を上げた。ファイザーでは、CEOが全従業員宛てにメッセージを送った。「親愛なる同僚の皆さんへ、このメッセージは、先週末にバージニア州シャーロッツビルで見られた偏狭さと暴力に関するものです」で始まるメモだ。「いかなる文明社会にも、あのような人種差別は許されません。先週末に起きたあの暴言と暴力の背後にいるヘイトグループと個人が、私たちのコミュニティに迎え入れられることはなく、その行動について責任を問われる必要があります」
その2年後の2019年、米国の経営者団体であるビジネスラウンドテーブル(BRT)は、企業のパーパスを見直し、株主至上主義から脱却して、すべてのステークホルダーの利益を目指すべきだとする声明を発表した。ファイザーは、主要多国籍企業180社とともにこれに署名した。この宣言は、企業リーダーが社会問題にもっと強力に関与することなどを含む、新しいリーダーの条件を定めた。
5. そのイシューは我が社の価値観とどのような関係があるか
この問いは、BRTの声明に喚起されたものだ。検討事項を一つ加えることは重要だ。ファイザーは、勇気、卓越、公平、喜びという4つの価値観を定めている。そのいずれも、私たちを行動に駆り立てる。
この枠組みは、私がより簡単かつ効率的に仕事を進めることを可能にしてくれる。これを基礎に据えれば、実際に成し遂げるべき仕事に、すぐに全力で取り組める。明日はどのような論争が起こるかはわからないが、我が社のために、それをどう評価すべきかという方法はわかっている。
この点で私は、名誉ある軍人でもあった元米大統領ドワイト D. アイゼンハワーの「計画そのものに価値はないが、計画の立案プロセスがすべてを決める」という意見に賛成だ。皆さんも、自社に最も適した枠組みを見つけ、あるいは我が社の枠組みを自由に使い、何が起きても対応する準備ができていると常に感じられる仕組みを構築しておくことをお勧めしたい。
※本稿はBreaking Throughの内容に若干編集を加えている。
"When Should Your Company Weigh In on Hot-Button Issues?" HBR.org, April 03, 2023.