品質を考慮した価格

 ソーシャルメディアのサブスクリプションサービスの価格は、ユーザーが支払う料金と引き換えに、受け取っていると認識されている品質によって決まる。価格対品質比は、ユーザーが認識する価値と定義される。スナップチャットは、調査対象のソーシャルメディアアプリの中で最初にサブスクリプションサービスを開始し、料金も月額3.99ドルで最も低い。ツイッターは現在、8ドルという価格に落ち着いている。一方、メタはオーストラリアとニュージーランドで、ウェブ版を11.99ドル、iOSまたはアンドロイド版を14.99ドルで販売した。

 サブスクリプションを選択した場合に受け取る品質を踏まえ、これらの価格についてユーザーに尋ねた。「ツイッター/フェイスブック/インスタグラム/メタ/スナップチャットのサブスクリプションサービスの品質を考慮すると、サブスクリプションサービスの価格をどう評価するか」。独立した4つのアプリに加えて、メタをこの価値カテゴリーに含めたのは、フェイスブックとインスタグラムの価格をバンドル化しているためだ。

 興味深いことに、課金の初期段階である現在、メタのバンドル(7.25)、単体のフェイスブック(7.23)とインスタグラム(7.28)に対する評価は、ツイッター(7.37)とスナップチャット(7.38)からユーザーが得られると認識している価値に及ばなかった。この質問についても、1=「品質を考えると非常に割に合わない価格」から10=「品質を考えると非常に良い価格」までの10段階評価を使用した。

 すべてのアプリと、フェイスブックとインスタグラムのバンドルで一貫して、大卒、保守的、若年層、男性、高所得のユーザーは、有料サブスクリプションに対してより大きな潜在的価値を認識している。

理想的なソーシャルメディアサービス

 現在、市場には無数のソーシャルメディアアプリが存在し、毎日のように新しいアプリが登場している。既存のユーザーにとっても潜在的なユーザーにとっても、どのプラットフォームが自分のニーズや欲求に最も適しているのかを見極めるは困難だ。

 米国顧客満足度指数(ACSI)は通常、3つの質問で顧客満足度を測定し、重み付けをして指数化する。しかし、ツイッター、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャットの有料サブスクリプションサービスの新しさを考慮して、特許取得済みの解析手法である技術的モデリングをもとに、一つの質問を使用した。「理想的なソーシャルメディアサービスを思い浮かべ、ツイッター、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャットの有料サブスクリプションサービスは、その理想と比較してどの程度優れていると思うか」というものだ。1=「理想にあまり近くない」から10=「理想にとても近い」の間で評価してもらった。

 回答者は現時点では、フェイスブック(7.32)とツイッター(7.35)が提供する機能よりも、インスタグラム(7.42)とスナップチャット(7.41)が発表した有料サブスプリクションサービス、および前述した機能に対する満足度が高い。メタが発表しているフェイスブックとインスタグラムの有料サービスがほぼ同じ機能であることを考えると、これは興味深い。フェイスブックは年配のユーザーにアピールするために進化し、インスタグラムは平均的に若いユーザーを維持していることから、メタはそれぞれのソーシャルメディアプラットフォームで共通の機能を有料で提供することは、得策ではないかもしれない。

 全アプリに共通して、大卒、保守的、若年層、男性、高収入のそれぞれのユーザーは、自分が求めるソーシャルメディアの有料サービスの理想像に近いと認識している。この結果は、認識する価値の結果と一致している。

ユーザーが加入する可能性

 ソーシャルメディアユーザーを対象とした今回の米国調査において、おそらく最も重要な点は、ユーザーが新しい有料サービスに加入する可能性だ。ツイッターとメタは、特にツイッターブルーやフェイスブックとインスタグラムのブルーバッジへの転換をユーザーに促す手段として、有料サービスの検証と認証の機能を積極的に強調しているが、無料の選択肢は残っている。

 ユーザーにはこう質問した。「ツイッター/フェイスブック/インスタグラム/スナップチャットの、無料だが認証が不十分なサービスと比較して、有料サブスクリプションサービスを購入する可能性はどの程度か」

 回答には有意な順位がみられ、スナップチャットが最もスコアが高く(7.27)、インスタグラム(7.21)、フェイスブック(7.16)、ツイッター(7.14)と続いた。このロイヤルティに関する質問(この場合、正確には、購入意向に関する質問)のスケールは、1=「非常に低い」から10=「非常に高い」までだ。

 顕著なのは、大卒のユーザーはすべてのアプリの有料サービスを少なくとも試す可能性が高いことだ(平均は7.41で、大卒未満のユーザーは5.85)。また、保守派(7.56)はリベラル派(6.68)よりも加入する可能性が強い。若年層、男性、高収入のユーザーも有料サービスへの加入を好むが、大卒や保守的なユーザーほど顕著ではない。

重要なポイント

 インスタグラムは、サブスクリプションサービスに対するユーザーの期待が最も高いソーシャルメディアサービスであり、それに伴って認識されている品質とユーザー満足度も高い(インスタグラムの顧客満足度はスナップチャットと同程度)。ツイッターとスナップチャットは、サブスクリプションサービスが市場に出た初期の段階においては、認識されている価値で優位に立っている。

 スナップチャットは、スナップチャットプラスに加入する可能性が最も高いという点で、有料サービスの最も忠実な潜在的ユーザーを抱えている(ツイッター、フェイスブック、インスタグラムのサブスクリプションよりも長く、低価格で提供されている)。

 若いソーシャルメディアユーザー(35歳未満)、大卒のユーザー、政治的に保守的なユーザーは、それぞれ期待値が高い。また、認識している品質、価値、潜在的な満足度も高く、ツイッター、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャットのサブスクリプションサービスを購入する可能性も高い。

(1)低所得層と高所得層、(2)男性と女性、それぞれの間の意見の潜在的な差異は、いくつかのケースでは確認されたものの、サンプルサイズ1056人の全米のユーザーサンプルに基づく年齢、教育、所得における差異よりも小さく、実質的に有意ではない(誤差は3%未満)。

 全体として、インスタグラムは、有料のサブスクリプションサービスに最適な機能とユーザーフォーカスを採用しているように思われるが、メタのもう一方のサービスであるフェイスブックとツイッター、スナップチャットは、高品質の機能とターゲット市場のフォーカスを戦略的に再編する必要があるかもしれない。


"Research: How People Feel About Paying for Social Media," HBR.org, April 05, 2023.