
ソーシャルメディアアプリへの課金
ソーシャルメディアが無料で使える時代は終わりつつあるのだろうか。アプリがユーザーに課金をするようになっている。スナップチャットは2022年6月、有料サービス「スナップチャットプラス」を開始。同年11月にはツイッターが続き、2023年2月にはメタ・プラットフォームズ(フェイスブックとインスタグラム)がサービスのサブスクリプションバンドルの試験販売を開始した。
現在、サブスクリプションの価格帯は3.99~14.99ドルで、スナップチャットが最も安く、フェイスブックとインスタグラムのバンドルが最も高い。後者はウェブ版が11.99ドル、iOSまたはアンドロイド(Android)版が14.99ドルだ。また、ユーザーの期待、認識されている機能の品質、提供される価値への理解、潜在的な満足度、有料のサブスクリプションサービスを選択する可能性なども異なる。
これらのソーシャルメディアアプリにおける課金モデルの主な利点は、ボットや偽情報に対する懸念を軽減するためのユーザーの検証と認証だと、各アプリの運営企業は戦略的に示している。その目的は、言論の自由とアイデアのオープンな流通を保護しながら、ソーシャルメディアのコミュニティに情報と偽情報を区別するためのより強固な基盤を与えることにあるようだ。
マーク・ザッカーバーグは、フェイスブックとインスタグラムのバンドル「メタ認証」について、「政府発行の身分証明書でアカウントを認証し、(認証マークの)ブルーバッジを獲得することができ、自分を名乗るアカウントに対するなりすまし対策が強化されていて、カスタマーサポートに直接アクセスできるサブスクリプションサービス」と説明している。
イーロン・マスクは、「ツイッターブルー」をユーザーの認証としてだけでなく、現在は広告収入が90%を占める収益源を多様化するための、新たな収益の手段としてとらえている。一方、スナップチャットのサブスクリプションサービスは、最も熱心なユーザーに限定的かつ実験的な機能を提供することに主眼を置いている。
その意図はともかく、ユーザーは無料で使うことに慣れていたソーシャルメディアアプリにサブスクリプション料金を支払うという状況に直面している。
そこで浮上する疑問がある。サブスクリプション料金を軸に再構築されたソーシャルメディアのエコシステムにおいて、ユーザーはツイッター、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャットに何を期待しているのか。そして、初期に発表された機能をベースに活用しているユーザーはその品質と価格をどう認識しているのか。そして、おそらく最も重要なのは、これらの新機能がユーザーの求める「理想」にどれだけ近く、ユーザーがこの4つの各アプリの新しいサブスクリプションサービスを選択する可能性はどれだけあるのかということだ。
ユーザーの期待
ユーザーが何を期待するかは、使っているソーシャルメディアプラットフォームと、そのプラットフォームが提供する独自の機能によって異なる。
インスタグラムはインフルエンサー、アーティスト、ブランドなども使用しており、10代から40歳未満の成人に人気がある。フェイスブックのユーザーは、たとえば米国では成人のほぼ4分の3を占め、40代以上の世代は年齢が上がるほど同アプリでの活動が活発になるようだ。
ツイッターのユーザーは34~65歳が大半を占め、ニュースについて語り、消化するコンテンツは少なく、リアルタイムでつながることを望んでいる。スナップチャットのユーザーは主に18~29歳の女性で、日に何十億もの動画が再生されている。
筆者らは、ツイッター、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャットそれぞれのユーザーに対し、各アプリの無料サービスの利用経験をもとに、新たな有料サブスクリプションサービスの品質への期待を評価してもらった。1=「あまり高くない」から、10=「非常に高い」までの10段階評価で、1056人から回答を得た。
4つのプラットフォームに対する平均的な期待値は7.25~7.38で、インスタグラムのユーザーが最も楽観的だった。若いユーザー(35歳未満)、大卒のユーザー、政治的に保守的なユーザーはそれぞれ期待値が高く、認識している品質、価値、潜在的な満足度も高く、サブスクリプションサービスを購入する可能性が最も高い。
ツイッター、フェイスブック、スナップチャットの有料サービスについては、男性が高い期待を持っているのに対し、インスタグラムについては、期待値の男女差はほぼなかった。所得階層別の期待値は、インスタグラムのみ有意差があった(高所得者ほど期待値が高い)。
機能の品質
どのようなブランドにも言えることだが、ツイッター、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャットなどが有料サブスクリプションサービスの一部として提供する機能は進化している。イーロン・マスクは、2022年11月のツイッターブルーのローンチ以来、ほぼ毎週サービスを変更、停止、再ローンチしてきた。いまのところ、ツイッターはサブスクリプションサービスの中核として、ユーザー認証、広告の削減、リプライの優先表示、より長い動画の投稿に重点を置いている。
メタは、ユーザー認証、なりすまし対策、カスタマーサポートへの直接アクセス、視認性とリーチの向上を特徴としている。スナップチャットは、ユーザー認証、アプリアイコンの変更、ストーリーを再視聴したユーザーの確認などを盛り込んでいる。
ツイッター、メタ、スナップチャットの主要なターゲティングアプローチは、ユーザーの要求を中心に据えたものだ。そこで、各アプリの注力ポイントと機能を特定したうえで、ユーザーに以下のように尋ねた。「ツイッター/フェイスブック/インスタグラム/スナップチャットの有料サブスクリプションサービスは、あなたの個人的な要求にどの程度合致しているか」
回答は、ユーザーの期待値よりもばらつきが小さく、最も低いフェイスブックが7.31、最も高いインスタグラムでも7.41だった(1=あまりよくない、10=非常によい)。しかし、大卒未満のユーザーと、大卒以上のユーザーとでは、非常に大きな違いがあり、大卒以上のユーザーは4つのアプリすべての機能について品質はかなり高いと認識していた。同様に、保守的な政治観を持つユーザーも、すべてのアプリについて機能の品質が高いとの認識を持っていた。