意識的に行動し、段階的に振る舞い方を変える
新しいアプローチを実践すると決めたら、長期にわたって取り組み続けること、そして、段階を追って少しずつ、しかし不安定にならないように新しい行動パターンを実践する覚悟を持つことが必要だ。ボディランゲージや、思考様式、コミュニケーションの手法、さまざまな活動への関わり方、コラボレーションへの姿勢、存在感の示し方、業務で発揮する生産性……こうした要素がほんの少し変わるだけでも、長期にわたって大きなインパクトが生まれる可能性がある。
数年前、筆者はある企業の上級幹部のコーチングを依頼されたことがある。そのクライアントは、その会社で長年働いていて、筆者がコーチングを引き受ける2年前に昇進を果たしていた。ところが、昇進という目標を達成すると、物事の歯車が少しずつおかしくなり始めた。仕事へのエンゲージメントが弱まり、そのことは周囲にも伝わっていた。上司も情熱の減退を指摘するようになった。この人物が仕事に対してどのような感情を抱いているかは、筆者も初めてやり取りした時にありありと感じ取ることができた。
最初のコーチングの面談では、どのようなことで評判を確立したいのかを話し合った。このクライアントは、そうやって、自分のために、そして自分がキャリアで成長を遂げるために何が重要かをじっくり考えた結果、職場でさらに存在感を高めるよう努めるべきだという結論に達した。
このクライアントは当初、何から始めればよいのか見当がつかなかった。それでも、筆者との会話が進むうちに、全社会議のことを思い出した。すべての社員に門戸が開かれているけれど、出席が必須ではない会議だ。その会議に出席したことは、それまで一度もないとのことだった。いつもあまりに多忙だったからだ。しかし、自分の存在感を高めるための最初の一歩として、この会議に出席してはどうかと思うようになった。
そこで、試しに出席してみると、30分間の非公式の会議をスケジュールに押し込むことは思っていたほど難しくなかった。そこで、翌月の会議にも出席した。上司もその点を目に留めて、高く評価してくれた。
シンプルでもインパクトの大きい問題の解決に取り組む
ここまでのステップでは、日々の業務への臨み方をどのように変更すべきかを検討してきた。このプロセスを通じて、あなたはすでに変化への一歩を踏み出したといえる。引き続き、機会が目の前に表れた時に職場に貢献する方法を探そう。問題解決のための取り組みは、かならずしも時間のかかるものや複雑なものである必要はない。問題解決で最も重要なのは、障害にぶつかっても脱線することなく、ソリューション志向であり続けることだ。
あなたの仕事について、誰よりもよく知っているのはあなた自身だ。自分が持っている知識をほかの人たちに伝えたり、その知識を自分で活用したりするだけでも、大きな価値を生み出せる場合がある。そうした可能性を過小評価すべきでない。時には、あるツールの使い方がわからない同僚に使い方を教えたり、チームの生産性の足を引っ張っている障害を取り除いたりするだけでも、問題解決能力の高い人物としてインパクトを残せるかもしれない。
問題に直面した時は、どうすれば好ましい成果を生み出せるのかを考えるようにしよう。しかし、いっそう努力を払うことと、長時間働くことを同一視してはならない。あなたが常に長時間働いているにもかかわらず業務処理量が増えなければ、非効率な働き方をしている証拠だと見なされかねない。あるいは、時間内に業務を完了するスキルを持っていないと誤解されてしまう可能性もある。
ただ長時間働くのではなく、自分が有能で、主体的に行動を起こすことができて、必要な場合にはいっそう努力を払える人間なのだと実証するよう努めよう。
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新しいステップに踏み出す時は、他人からの評価だけを成功の基準と見なさないようにすべきだ。自分のキャリアに投資することは、やがて極めて大きな価値を生む。当面は、新しい決意を貫くこと、そして、その進捗度を追跡することだけを考えればよい。自分が行った選択と、変化に向けて取ろうとしているステップに、誇りを持とう。
評判を築くためには時間がかかる。しかし、そのために時間を費やすことは賢明な投資といえる。高い評価を受けているプロフェッショナルは、一定のレベルで稼働し続けることができる人たちだ。あなたも、自分の足を引っ張る悪評を払い落して、前進の後押しになるような評判を築くために、一貫して努力し続けることを誓おう。
"You Checked Out at Work. Here's How to Check Back In.," HBR.org, April 04, 2023.





