厳しい決定をチームに伝える方法
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サマリー:事業の中止や解雇など、組織で決めた厳しい結論を、その対象者に伝えることは難しい仕事である。本稿ではそのような悪い知らせを正しく伝えるための6つの原則を提示する。

つらいことを伝える時、リーダーに生じる誘惑を乗り越える

 筆者が以前、大手通信会社の依頼で、シニアマネジャー300人を対象とした8時間のセミナー講師を務めた時のことだ。

 出番の数分前になって、担当のエグゼクティブが筆者の肩に手を置き、こうささやいた。「セミナーの前に、私からみんなに大切な発表があるため、少しだけお時間をいただきます」。筆者はほとんど気に留めずに準備を続けた。開始時刻になると、彼はみんなの前で言った。「みなさん、大変申し上げにくいのですが、2つの大規模プロジェクトがキャンセルになります。そのため、みなさんのうちの2割の方が解雇されることになります。詳細は後でお知らせします。本日はグレニー先生のセッションに全力で集中してください」。そう言い終えると、彼はそそくさとドアの向こうに退散した。

 これは、このリーダーの最良の判断とはいえない。一方で、たいていの人は彼が屈した「逃げたい」という誘惑に同情するだろう。悪い知らせを伝え、その影響に対処するというつらい仕事を避けたくなるのは無理もない。あなたが厳しい現実を告げる役回りになった時、次のような誘惑に気づくだろう。

・先延ばしにする

 つらいことを先延ばしにするのは、チームのニーズよりも自分のニーズを優先させることを意味する。それによって情報の受け手となる人々が、悪い知らせを咀嚼し、どのように対応できるか、あるいは対応したいかを考える貴重な時間を奪っている。

・誰かのせいにする

 悪い知らせを伝える時、自分は決定を下した人々に反対していたと訴えたり、悪影響を被る人々への忠誠心を示したりして、決定の責任を他人のせいにするのは、組織とチームの人々のニーズのバランスを取るというリーダーの責任から逃げていることになる。

・心理的距離を置く

 前述の通信会社のエグゼクティブのように、決定によって人生に打撃を被る人々から、さっさと身を隠したくなるかもしれない。共感を交えずに事実を発表し、それがもたらす苦痛から我が身を守ろうとするのである。

 この通信会社のエグゼクティブの件は、筆者にとって忘れがたい記憶となった。その後、ある世界一流のチームに対し、その組織全体が解散になるということを告げることになった時、あのようなやり方はしないと心に誓った。筆者にとって、非常に大切な人々だった。この知らせが彼らを驚かせ、失望させ、傷つけることはわかっていた。

 チームに会いに行く飛行機の中で、つらい会話の指針となるような数項目の原則を大まかにまとめた。それに従ったからといって、気持ちのよい経験になったわけではない。それでも、人間味のある対応になったと言うことはできる。

 以下に挙げる6つの原則は、責任を持って(その決定における自分の役割を引き受ける)、率直に(決定の論理について言いわけをしない)、相手を思いやりながら(これまでの仕事に深く感謝し、この決定が引き起こすだろう痛みを受け入れる)、忍耐強く(彼らの感情的ニーズがどのようなものであれ、どれだけ続くものであれ、尊重する)、その知らせを伝えるのに役に立った。