大事なことは最初に言う
爆弾にはゆっくりと忍び寄ったほうが、落として爆発させた時の動揺を減らせると思う人がいるかもしれない。だが、それは違う。避けられないショックに対して不安を増加させるだけである。言いにくいことがある時は、まず言ってしまうことだ。その後で、理解と共感を示すことに取りかかろう(3番目と4番目の原則)。
筆者はチームへの通告をこう切り出した。「この特別なプロフェッショナル集団の今後の方向性について、何カ月も慎重に協議を重ねてきましたが、理事会は本日より90日をもって活動を中止するという難しい決断に至りました」
間を置く
決定が唐突であったり、決定によって及ぶ影響が大きかったりする場合は、少しの間、相手はあなたの言葉が何も耳に入らないかもしれない。先を急いではいけない。少し間を置いて、息を整えてもらおう。できるだけ全員とアイコンタクトを取る。重要なポイントを頭で理解する時間を与えてから、次に進もう。
理解できるように説明し責任を取るが、同意は期待しない
少し間を置いてから、筆者はこう言った。「これを受け入れるのは容易でないことはわかっています。多くの方がショックを受けていることでしょう。どのようにして、この結論に至ったのかを少し説明させてください。この結論に同意していただけるとは思っていません。それでも、私にはここに至るまでの経緯をご説明する義務があります」
リーダーたちが直面したトレードオフと、最終的な決定を導いた原則と基準を、言葉を尽くして説明しよう。理性的な人々でも同意することは難しいかもしれないが、それは尊重しよう。この決定を他人のせいにしてはならない。リーダーであるあなたは組織の代理人であり、その職に就いた時に、この役割を果たす責任を受け入れたのだ。
嫌われたくないという願望で、あなたの誠意を濁らせてはいけない。たとえ、あなたがその決定に関与していなかったとしても、決定に当たってのリーダーたちの論理を忠実に提示することが、あなたの務めである。それが倫理的に不可能である場合は、職に留まるかどうかを検討すべき時だ。
共感を示す
次に、慎重に辛抱強く、感情面の対処をしよう。焦ってはいけない。その決定がもたらす衝撃と人々が抱くだろう感情を全面的に認めよう。起こりうる痛みを過小評価するよりは、正当なものとして過大評価しておくほうがよいのだ。
筆者はこう強調した。「あと1カ月足らずで、休暇シーズンに入るというこのタイミングで、こうした通告をするのは心苦しく思っています。ご友人やご家族とくつろぐはずの時間がそれどころではなくなることを思うと、胸が痛みます。本当に申し訳ありません。タイミングについては慎重に検討しましたが、残された資金で皆さんを次の仕事に移行する支援を行うことのほうが重要と考えました。あと2カ月先延ばしにしたら、支援のための資金が何十万ドルも減ってしまうのです」
オープンな姿勢で締めくくる
対話と支援へと誘う言葉で締めくくる。解決や拍手喝采を期待してはならない。彼らは決定を咀嚼するのに時間が必要なのだ。あなたのニーズではなく、彼らのニーズに焦点を当てよう。あなたの論理に反論の余地がなくても、それによって喚起される感情は時間をかけて発展していく。
筆者は最後にこう述べた。「今日、お伝えしたことについて、さらに詳しい説明を聞きたい方には時間を設けます。また、何であれ、皆さんの将来の計画をサポートできる方法を探します」
証明する
あなたの支援の約束を誠意あるものとして納得させるのは、ただ一つ、あなたのその後の行動である。筆者は人を解雇した時、正当な理由による解雇だったとしても、できれば退職から30〜60日後にランチに誘うことにしている。遠距離で非公式なつながりを持ちにくい場合は、長時間の一対一のバーチャルミーティングに招く。筆者にとって大切なのは、解雇の事情の違いにかかわらず、彼らを人として気にかけていることを知ってもらうことだ。悪い知らせの後でも、このフォローアップによって多くの大切な関係が生まれている。
悪い知らせを告げる瞬間は、あなたの感情面の成熟度、誠実さ、思いやりが試される試練の時である。思いやりを持ってその瞬間に向き合うことは、打撃を被る人々への最低限の務めであるだけではなく、よりよいリーダー、そしてよりよい人間になるための通り道なのである。
"How to Communicate a Tough Decision to Your Team," HBR.org, April 19, 2023.