4. 人材:あなたの会社は、テクノロジーの導入段階だけに留まらず、その後のサポートと運営の段階で必要とされるデジタルスキルを備えた人材を擁しているか。最新の「NCMM中規模企業指数」によると、90%以上の中規模企業は、現時点でデジタルスキルのわずかな不足、もしくは大きな不足に直面していると回答している。短期的には、実行段階でパートナーやコンサルタントを活用してそのギャップを埋めることも可能だが、長期的な人材プランをじっくり検討することも怠ってはならない。

5. リスクマネジメント:新しいテクノロジーが登場すると、新しいリスクが生まれる。あなたは、主なリスク要因の評価を行い、自社の最も重要なデジタル資産を守るために適切なセキュリティ上の対策を講じているか。信頼できるパートナーの力を借りれば、死角になっている要素を洗い出したり、新しく生まれる脅威を検出したりするうえで大きな進展があるだろう。

すべてが戦略に結びつくようにする

 以上の5つの点に関する検討結果は、当然ながら組織によって異なる。しかし、細かい状況の違いに関係なく、中規模企業のリーダーたちは、デジタル化へ向けて歩みを進めるに当たり、いくつかのより大きな戦略上の問いを改めて検討する必要がある。たとえば、以下のような問いだ。

・デジタルテクノロジーを活用してビジネス上の価値を創造することに関して、我が社は業界のトップに立つことをどれくらい強く望んでいるのか。

・我が社は、ビジネスのどの領域で業界の先頭を走っているのか。そして、どの領域で競合他社に後れを取っているのか。

・我が社のデジタル面に対するビジョンは、明確で包括的なものになっているか。それは、社内と社外の従業員と顧客と取引業者に広く理解されているか。それは、戦略上の意思決定の指針として活用されているか。

・我が社は、デジタルテクノロジーを活用して競争力を獲得し、売上げを増やし、資本をより効率的に用いるための戦略を持っているか。

 以上のことを慎重に検討し、これらの点について組織全体ですり合わせを行うと、目を見張る成果を得られる場合がある。NCMMの報告書『デジタル・トランスフォーメーションを実行すべき理由』によれば、DXのプロセスをきわめて戦略的に推進できているという自己評価を持っている企業は、そうでない企業に比べて、際立って成長のペースが速いという。

 この報告書の下敷きになった調査でもう一つ明らかになったのは、中規模企業の中でも比較的規模の大きい企業(年間売上高1億ドル以上)が、デジタル化への道のりで先を進んでいるということだ。規模の大きい会社ほど、リソースに恵まれていることを考えれば、この点は意外でない。

DXが持つ可能性を考慮すれば、変革のマネジメントは必須である

 誤解してはならないことがある。テクノロジーの変化に適応し、新しいシステムを日々導入することは、規模の大きな企業にとっても気が遠くなるほど難しい場合があるということだ。適切なマインドセットと戦略的アプローチを持ち、必要に応じて外部のリソースを活かすことが重要である。そうすれば、中規模企業でも、広い視野で変化と向き合い、DXの恩恵のすべてとは言わないまでも、恩恵のほとんどに浴すことができる。さらには、競争が激化する世界において自社の事業の効率を高め、コラボレーションを強化し、成長を促進できる可能性さえあるのだ。


"How Midsize Companies Can Drive Digital Transformation," HBR.org, May 02, 2023.