改革疲れを管理する

 組織変更管理(OCM)がすでにあるなら、疲労管理は経営者が強化しなければいけない新しい変更管理のタスクだ。改革疲れを防ぐアクションは3つある。

1. 変革に向けたエネルギーを維持するため、積極的に休憩を予定に入れる

 リモートワークやハイブリッドワークは、仕事と生活の区別をなくした。人事給与代行会社ADPによると、「労働者は事実上、毎週1営業日以上(8.5時間)に相当する無償労働をしていた。これは2021年よりは短くなったが、依然としてコロナ禍の前よりも長い」。ガートナーの分析では、労働時間が増えても、成果の上昇にはつながっていない。

 休憩は成果を向上させる。ただし、それが積極的なものであれば、だ。組織は、休憩へのアプローチを見直し、ワークフローに組み込んで、バーンアウトを防がなければならない。積極的な休憩には、3つの特徴がある。

・選択肢がある:従業員が休憩を取り、常に充電状態を維持するために使える戦略は多い。ミーティングゼロの日、勤務時間の定義、プロジェクトごとの計画的な「ダウンタイム」、全社的な休日などがある。

・取得しやすい:従業員は休憩の選択肢やツールを活用して、罪悪感を覚えずに休むことを奨励される。

・適切:休憩の選択肢が、個々人のニーズに合っている。

 ガートナーの調査によると、選択肢が多く、取得しやすい適切な休憩は、従業員の成果を26%向上させ、バーンアウトに陥る従業員の数を10分の1に減らす助けになる。

2. トップダウン式のアプローチから脱却して、改革計画をオープンソース化する

 オープンソースの改革管理は、改革の計画や実施に従業員を積極的な参加者として迎え入れる。これには、3つの考え方の変化が必要だ。

・意思決定に従業員を含める。これは、すべての変革について従業員の是非を問うという意味ではない。その決定の影響を最も受ける人たちの声を、計画立案に取り入れる方法を見つけるということだ。ガートナーの調査によると、このステップを踏むだけで、変革が成功する可能性は15%アップする。これにより、変革管理を実力ベースにし、最高のアイデアとインプットが意思決定に反映される可能性を高める。

・実施計画を従業員に任せる。リーダーはしばしば、チームの日常業務に十分なプレゼンスを持たず、変更を成功させる指揮を執っていない。また、改革の実施計画に従業員を参加させないため、抵抗に遭ったり、失敗に終わったりしやすい。ガートナーの調査では、従業員に実施計画を立案させると、改革が成功する可能性は24%アップする。

・改革のプロセスで、双方向の会話を維持する。改革を従業員にどう売り込むかに意識を集中するのではなく、コミュニケーションとは従業員の反応を知る方法だと考えよう。改革について定期的に本音で語り合う機会をつくれば、従業員は自分の疑問や意見を示すことができ、理解が確保され、自分が改革の一員であると実感できる。ガートナーの調査では、このステップを踏むと、改革の成功率は32%アップする。

3. 担当マネジャーの役割を見直す。

 多くのマネジャーは、上司のニーズと部下の期待のバランスを取ることに苦慮している。そのうえ、マネジャーも変化に圧倒されており、すべての変化について有効なロールモデルになることに苦労している。自分の日常業務で、チームの変革をサポートする余力が十分あると回答したマネジャーは、57%だった。

 リーダーは、マネジャーにすべての変革を擁護するよう求めるのではなく、レジリエンス(再起力)ビルダーとして振る舞うよう求めるべきだ。自分のチームが変革に自力で対処する能力を構築するマネジャーは、従業員の持続的パフォーマンスを29%向上させ、同時に自分のパフォーマンスも守ることができる。

 このようなマネジャーは、変革がどのようなものかを示す時間やスキルが自分に常にあるとは限らないことを知っている。代わりに、チームが実践を通じて学べるようにする。また、従業員の強みやモチベーションを見定めて、それを最もよく学ぶことができる経験豊富な同僚につなげる。

 変革の優先順位付けと疲労管理の戦略を組み合わせれば、2023年に行う改革の燃費を向上させ、抵抗を減らし、社員のエネルギーを活用して改革を勢いづけることができるだろう。


"Employees Are Losing Patience with Change Initiatives," HBR.org, May 09, 2023.