4. 問題を解決する方法を説明する

 このステップでは、問題をどのように解決したかを具体的に説明し、二度と同じことが起こらないようにするためにどのような対策を講じたかを示す。

 教科書の例では、出荷のランダムな検査を行って、手作業による確認を追加して徹底することや、コーディングソフトに冗長性を持たせて注文の確認を強化することが考えられる。たとえば、出荷される教科書が1~2年以上前のものであることがわかった時に、間違いである可能性があるからと再確認を促すことができる。また、繁忙期には更新作業を行わないようにプロセスを変更することもできる。

5. 謝罪の意を表す

 実際の謝罪の意の表明(「申し訳ございません」の部分)は、上記の懸念事項に十分に対処した後に行うのが最も効果的で、多くの行動に裏打ちされた謝罪の表明は、より一層誠実なものになる。

 誠意ある謝罪に、顧客はより前向きな反応を示す。顧客のビジネスに損害を与えたという事実を見失わないことが重要であり、その影響を認めなければならない。

 教科書の例では、取次会社は次のように述べるべきだ。「お客様の繁忙期にビジネスを中断させてしまい、申し訳ございません。お客様の信頼と信用を失わないようにするための取り組みをご覧いただき、安心していただけますと幸いです。お客様とお客様のお取引先様にお詫び申し上げます」

 このような文言は、真の謝罪の意と誠意が伝わるとともに、問題に対処していることを強調する。

謝罪のメッセージの例

 以下は、謝罪のメッセージの例文で、参考にしてほしい。この例では、企業が、顧客の繁忙期に発生したソフトウェアの停止について謝罪している。この例文は、謝罪のメッセージに盛り込むべき重要な要素をすべて網羅している。

【以下、謝罪メッセージ例】

今回の障害によってお客様、お客様のチーム、あるいは従業員の皆様に生じた可能性のある問題の修復に務めます。何よりもまず、特典付き申し込み期間の2倍にあたる1カ月分の返金を行うことの確認を弊社内で取りました。貴社の繁忙期に障害が発生したために、返金額を拡大しております。また、ソフトウェアの復旧後に発生したすべての申し込みが正確に把握されていることを確認するため、弊社のカスタマーサービスチームに手動で確認するよう指示しました。作業が完了次第、1週間以内にお知らせします。
ソフトウェアの停止は、すべて弊社の責任です。起きてはならないものであり、お客様の重要な時期においては言うまでもありません。弊社が全責任を負い、二度とこのようなことが起きないよう努めてまいります。
今回の障害が発生したことを十分に反省し、再発を防ぐため、弊社のチームが必要な変更を実施します。サービス停止は、計画的なダウンタイムに限定されるべきで、事前の連絡も必要であり、今回はそのどちらも実行できなかったことを反省しております。
問題の経緯をお伝えしますと、当社のデータセンターの一つで大規模な停電が発生し、お客様のソフトウェアが停止してしまいました。お客様のワークロードは、当社のバックアッププランとサービス契約の一環として、当社の他のデータセンターに切り替えられました。しかし、お客様のコンテンツが割り当てられた2番目のセンターが、保守とハードウェアの更新のために停止していました。そのため、お客様のワークロードの次の切り替え先を探すためにシステムが再構成されるまでの間、お客様のシステムが一時的に停止してしまいました。今後このようなことがないよう、冗長システムを更新しました。
このような障害が起きたことについて猛省しており、障害の発生を確認後、即座に技術チームと連絡を取り合い、解決に至りました。弊社を代表し、お客様だけでなく、貴社の幹部の皆様、影響を被ったすべての従業員の皆様にお詫び申し上げます。

謝罪のプロセスを文書化し、記録し、共有する

 顧客に対する謝罪を明確に文書化することが重要だ。そうすれば、将来、誰かが別のミスを犯した時に、会社は客観的な枠組みを利用して新しい謝罪のメッセージを作成することができる。自社の過去の事例から学ぶことで、従業員はうまくいかなかったことを回避し、将来のサービスの欠陥に対してより適切な対応を取ることができる。

 謝罪のプロセスは、外部のステークホルダーにも共有し、掲示すべきだ。これは「バウンダリースパニング」と呼ばれる。組織の脆弱性だけでなく、他の顧客に対しても困難なことが起こった時に頼りになることを示すため、サービス・リカバリー・パラドックスには欠かせない。

 企業は必ずミスを犯し、顧客を失望させるものだ。しかし、謝罪のメッセージをどのように構築するか、そしてそれを適切に伝えるための注意深い配慮が、顧客を失うか、逆に顧客のロイヤルティを高めるかの分かれ目となる。


"How to Apologize to a Customer When Something Goes Wrong," HBR.org, May 05, 2023.