バックアップとしてビデオを導入する

 直接顔を合わせるのが一番だが、ビデオはそれに次ぐよい方法だ。完全または部分的にリモートワークを導入している企業では、それが唯一の選択肢の場合もある。リーダーは、自分の姿を見せる方法として、カメラを柔軟に使うべきだ。参加者すべてがズームの画面から消えていても、マネジャーはなるべくカメラをオンにする。特にやっかいなトピックを議論する時にはオンにしておくべきだ。

 目の前にいる人に最も注意を払うという「近接バイアス」は、ビデオ通話ではさらに強まる。カメラに映った人は自分のそばにいるように思えるため、(音声のみの場合より)はるかに多く注意を払う。会議室で、スピーカーフォンから参加している少数の人の存在をほぼ忘れてしまうことがあるだろう。ビデオ会議でも同じことが起きる。リーダーは顔を見せることで、自分のメッセージにより多くの注目を集め、それを維持することができる。

ボディランゲージをうまく使う

 従業員が対面、あるいはビデオであなたのことを見ているのなら、メッセージの効果を下げることなく、確実に上げたいと考えるだろう。そのカギを握るのは、物理的な存在として言葉をどのように伝えるかだ。不確実な時は「存在していること」がより重要になる。

 私たちは、日常的なメッセージの伝達を練習することはあまりなく、それが弊害になっている。意識しすぎたり、練習しすぎたりする必要はない。会議や会話の前に、相手を落ち着かせたい、興奮させたいなど、自分の意図を確認することから始める。そして、会話中に自分のボディランゲージが柔軟で、メッセージに沿ったものであるかどうかを確認しよう。たとえば、ワクワクしていることを伝えたいのであれば、笑顔や活きいきとした表情を見せるべきだ。

 最も重要なことは、メッセージ性をみずから妨げないようにすることだ。ビデオでは、イスの背にもたれたり、別のスクリーンに目をやったりといったよくある習慣が、思っている以上に大きなダメージとなる。

 筆者がクライアントと接する時に実践している体の使い方は、ボディランゲージをオープンにする、姿勢を正す、相手(この場合はカメラ)のほうに体を傾ける、というものだ。また、顔の表情も自分の意図に沿うようにするために、必要に応じて表情を和らげたり、微笑んだり、あるいは中立的な表情をしよう。

エネルギーを戦略的に使う

 私たちが人から最初に感じる特徴の一つは、その人のエネルギーである。そして私たちが最も注目する人は、リーダーである。従業員は、リーダーがどういう時にどのように部屋に入ってくるか、インターン生が入ってくる時よりも深く理解している。よく言われるように、リーダーが雰囲気を左右するのだ。

 リーダーはこのことを認識し、チームの前で戦略的にエネルギーを使うべきだ。エネルギーは他人を巻き込むことができる。特に、厳しいメッセージを伝える時、不安を解消する時、賛同を得る時には、エネルギーがカギを握る。だからこそ複雑なメッセージは対面で伝えたほうがよい。バーチャルな場であっても、エネルギーは対面と同じかそれ以上に重要になる。

 自分のエネルギーを目盛り盤に見立て、聞き手の数ポイント上か下を目指すとよい。落ち着かせたいのであれば、聞き手より数ポイント低くする。興奮させたいのであれば、数ポイント高くする。それ以上の差をつけると、わかっていないとか、うといと思われるおそれがある。

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 従業員との対面で過ごす時間の必要性を考える時、リーダーはまず自分自身を見直す必要がある。重要なのは、常に視界の中に従業員がいることではなく、ここぞという時にリーダーが自分の姿を見せることなのだ。

 無駄な対面会議の罠に陥ることなく、魅力的なリーダーシップとより深い理解のために、対面での時間を有効に活用したい。


"Face-to-Face Time with Your Employees Still Matters," HBR.org, May 08, 2023.