リーダーが従業員と直接顔を合わせる時間はいまも重要だ
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サマリー:リモートワークやハイブリッドワークが当たり前になっているいま、従業員は対面コミュニケーションにネガティブになっている。しかし、リーダーは従業員との対面の時間を重視しなければならない。なぜなら、対面で交... もっと見る流し、姿を見せることこそ、リーダーがメッセージを従業員に伝える最適な方法だからだ。本稿では、リモートチームやハイブリッドチームを率いるリーダーが、従業員との対面コミュニケーションを効果的に行うための4つの戦略を紹介する。 閉じる

「従業員はオフィスにいるべき」という考え方から脱却せよ

 従業員に、直接顔を合わせて話す時間を増やしたいと告げると、ため息やうんざりした表情が返ってくるだろう。多くの人は、対面の会議は必要悪だと考えている。なぜなら、有意義な仕事を最も迅速に行うためではなく、政治的な理由で顔を出さなければならない無駄な時間に感じるからだ。

 私たちが直感的にわかっていることは、研究によって裏打ちされている。たとえ座っているだけでも、姿を見せることはコミットメントなどのポジティブな意味を帯びる。ところが、リモートワークやハイブリッドワークの環境が働く人々の常識となり、今後もそれが続くと見られるいま、従業員は従来の対面コミュニケーションの時間を過去のものにしようとしている。

 多くの場合、対面での時間を求めるのは、オフィスに従業員を呼び戻そうとするリーダーで、リーダーはコロナ禍前のスタイルを取り戻したいと考えている。筆者が最近話をしたあるCEOは、従業員がどのような仕事に取り組んでいるのか確認したり、ちょっとした会話をしたりするのが難しくなったと嘆いていた。オフィスですべきことのガイドラインを定めても、従業員はオフィスには戻ってきていない。彼の職場も、他の多くの職場と同じように、「ノーマル」への回帰がうまくいっていないようだ。

 従来型の対面での時間は気が重いかもしれないが、それをあらゆる対面の交流と同一視すべきではない。さもなければ、人との交流によって相手の関心が理解できるという、重要な点を見落としてしまう。振る舞いや声のトーン、エネルギーなど、相手から発せられるささやかなサインが、その人の動機やメッセージを明確に示す。

 私たちはとりわけリーダーからそういったサインを読み取ろうとする。経営学者の故シガル・バーセードによる画期的な研究で明らかになったように、感情は、リーダーが他の集団に影響を与える主要な媒介役を果たす。どれほどうまく書かれたメールでも、感情を正確に伝えることはできない。

 そのため、リーダーが対面で従業員と向き合う時間は最も重要なのだ。

 特に不確実な時代には、私たちはリーダーとのやり取りを通じて、状況を理解し、自分の行動を適応させる。「サムが全社員会議で心配そうであれば、私も心配しよう」「アニカからリストラの説明を聞いた後で、どうするかを決めたい」という具合だ。リーダーの姿が見えなくなると、非常に心配になる。

 2023年の経済情勢や、リモートワークやハイブリッドワークが進む中、リーダーはできるだけチームに姿を見せること、しかもそれを対面で行うことが重要である。これは、バーチャルを廃止するという意味ではない。バーチャルは今後も望ましい日常として継続することが予想される。リーダーは、一般的によく言われている「(従業員は)オフィスのデスクにいるべき」というアプローチを推進するのではなく、大事な時に自分が姿を見せるように、創造的かつ意図的に行動しなければならない。これは、CEOにとっても初めてマネジャーになった人にとっても、同じように重要なことだ。以下では、ハイブリッドチームや完全なリモートチームを率いるリーダーが、みずからの可視性を高めるための4つの戦略を紹介する。

ハイブリッドワークの出社日には重要なメッセージを直接伝える

 企業は出社日を活用するようになっているが、不満はまだ多く聞かれる。オフィスに数人しかいない、デスクに座ってビデオ会議をしなければならない、オフィスでの会議が多すぎるといった具合だ。出社すること自体が不快な対面コミュニケーションのように思われるのはそのためで、これは非生産的と言わざるをえない。

 リーダーは、出社日をコミュニケーションの日だと考えるべきだ。この時間を有効に使う最善の方法の一つが、重要な問題について話すことである。そこでカギとなるのが、状況と明確さだ。事前に従業員に、リーダーとのコミュニケーションで足りないものは何かを確認し、時間を注意深く配分しよう。

 対面の時間は、一対一の会議、グループ会議、オフィスアワー、オフィスの外での交流などを組み合わせる必要があるかもしれない。数人が別々の日に出社するよりも、チーム全員が出社する日(ハブデー)を設けることで、出社日数は少なく抑えられる。出社日にチームの代表が揃っていれば、双方向のコミュニケーションはよりスムーズになる。