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パンデミック下の習慣のうち、捨てるべきもの
2023年5月11日、米国では、新型コロナウイルスに関する公衆衛生緊急事態が解除された。しかし、
過去3年間にわたって続いたプレッシャーの中で、キャリアと子育てを両立させようとする人はみんな、新しい対応を迫られた。そしてその大半は何とか「切り抜ける」ための手段だった。あなたも保育所が閉鎖された時期にはパートナーと勤務シフトを交替し合ったり、ズーム会議が始まるたびに、背景に子どもが映り込むことに断りを入れたりしていたかもしれない。
こうしたライフハックの中には、いまなお役立つものもある。ズーム会議で何度も断りを入れていたおかげで、家庭での責任について同僚と気兼ねなく話し合えるようになり、職場でもありのままの自分でいられるようになったかもしれない。あるいは部分的であってもリモートワークを続けたことで、週5日通勤していた頃にはできなかったような子どもの学校行事への関わり方が実現したかもしれない。またオンラインPTA会議など、パンデミック下の実践的な解決策は働く親にとって好都合だったので、これからも継続することが好ましいだろう。
その一方で、パンデミック下のルーチンや考え方の多くは、もはや役立たなくなっている。実際のところパンデミック下での、行動面や精神面における対応は、体が覚えて深く染みついてしまい、本当の望みを実現する足かせになるものもある。本当の望みとは、キャリアで成功し、同時に愛情深く子どもと向き合う親でいること、そのプロセスにおいて健康で、健全で、自分らしくあることではないだろうか。
今後もキャリアと子育てを両立させるために、これまで体が覚えたことを少し問い直してみてほしい。パンデミック下で得られたよい習慣をどう継続するかについては、すでに慎重に考え、これからも必ず続けたいルーチンや行動(家族と食事する時間をさらに増やすなど)の選別してきたかもしれない。
では、もう一歩進んで自分に問いかけよう。もはや、あなたにとって役に立たないものは何だろうか。
考えやすいように、具体的に見ていこう。以下に挙げるのは、パンデミック下で働く親の4つの習慣と物の見方だ。多くの母親や父親がこれらに固執し、個人としてまたはプロフェッショナルとして犠牲を払うことさえある。あなたもその一人かもしれない。
このリストに目を通し、あなたはどれに陥っているか検討してほしい。また、それぞれの項目について、リスクが低く、効果的なリセットの方法を紹介する。習慣や物の見方を微調整しアップデートすれば、今後さらに役立つはずだ。
パンデミック下の4つの習慣と物の見方
1. 保育サービスが不十分でも何とかしてしまう
パンデミックの間、多くの、またはほとんどの親はフルタイムで子育てをし、同時にフルタイムで働かなければならなかった。まさしく超人的といえるだろう。ところが、いつの間にか、超人的だったことが普通のことになり、さらには期待されることにさえなった。
正規の保育サービスや信頼できる保育サービスの助けがなくても生き延びたという事実が、「それほど支援がなくてもやっていけるはず」という感覚に形を変え、さらには「よい子育てとは、できるだけ保育サービスを利用しないこと」という信念として固まってしまった。
その結果、多くの親が実際に必要とする支援を求めなかったり、求めることに後ろめたさを感じたりしている。
筆者のクライアントの一人である新米の働く母親は、企業の財務担当エグゼクティブだが、最近、彼女はこう言った。「生まれて1年間は、赤ちゃんはずっと私と一緒にいるべきなのです。ほかの親たちはパンデミックの間、保育サービスの支援なしで切り抜けたのですから、私にもできるはずです」。かつて成績優秀なプロフェッショナルだった彼女は、赤ちゃんの世話と会社の予算編成を同時にこなそうとして、筆者のもとに駆け込んできた。無理もないことだが、仕事の質が低下し始め、彼女自身が認めるように、急速に燃え尽き症候群(バーンアウト)に近づいていたのだ。
これは極端なケースかもしれないが、あなたの身にも多少、覚えがないだろうか。あなた自身の「あるべき育児」の持論に翻弄されていないだろうか。
新しい対応:あなたが本当に必要とする保育サービスについて、賢明に、現状に合わせて決める。
戦時中のような環境で生まれた非現実的な基準にこだわるのではなく、自問してみよう。「私が効果的に仕事をするために、いま、どのような保育サービスの手配が必要か」。それは、週2日、訪問営業ができるように子どもを学童保育に預けることかもしれないし、パートナーがフルタイム勤務に戻ったいま、ナニー・シェア(複数の家で1人のベビーシッターを雇うこと)を金曜まで拡大することかもしれない。
何が正しいか正しくないか、ではなく、それぞれの家庭に合った保育サービスがある。大切なのは、非現実的な基準に縛られるのをやめて、現在のニーズに積極的に対処し始めることだ。適切な保育サービスを利用したからといって、あなたが悪い親や怠慢な親になるわけではない。むしろ、くたびれ果て、打ちひしがれ、過酷な仕事を同時にこなそうともがきながら、子どもとの時間を過ごすような状況から、子どもと一緒にいる時にはしっかりと子どもに向き合えるようになるだろう。