2. リモートワークこそが「答え」と思い込む
2年余りの在宅勤務で、あなたは一度もズーム会議を欠席しなかったし、ましてや納期に遅れたこともない。ところがいまになって、会社はオフィスに戻って来いと急き立てる。まるで、働く親であることを可能にする唯一の貴重なツールを捨てろといわれているようだ。
新しい対応:あなたに合うフレキシブルな働き方を、できるだけ視野を広げて創造的に考える。
リモートワークはパンデミック下における「天からの贈り物」だった。いまも、働く親にとっては強力かつ中核的なツールかもしれない。しかし、それがすべてではない。もしあなたにとって重要な目標が、子どもが夕方、宿題をする時にいつでも見てやれることならば、勤務時間をずらすといった方法や、勤務スケジュールを圧縮するという手もある。
あるいは、人生とキャリアのこの時点で必要なのは、さらに構造的な変化なのかもしれない。たとえば、ジョブシェアリングをすれば、週5日勤務のうち2日間をまるまる休めるだろう。視野を広げて考えれば、それだけあなたが望む働く親としての生活を形づくりやすくなる。
3. とにかく今日を乗り切る
学校は閉鎖され、仕事は際限がなく、孤立状態がエネルギーを奪っていく。残されたわずかなエネルギーを温存するため、先のことを考えず目の前のことだけに集中するようになった。目標などない。とにかく午後5時までを乗り切れればよい。
新しい対応:より大きな全体像と、より長い期間を積極的に想像する。
短期的思考は、危機においては有効な自衛戦略だ。しかしいまなお、それが定番だというなら、あなたはわざわざ自分を苦しめ、生活を必要以上に厳しく気の滅入るものにしている。
それらをやめて、カメラでいうところを「絞り」をさらに開いてみよう。いまから何年かのち、プロフェッショナルとして、人として、親としてどうありたいかをイメージできたら、働く親のさまざまな務めは、はるかに実行可能なものに見えてくる。
みずから選んだ具体的でポジティブなゴールを胸に抱いていれば、日々、直面する小さな決断はさらに単純明快になる。そして現在の懸命な努力は、すべて大切な目標のためだとわかっていれば充足感も湧く。目標に向かうための弾みがついて、よりエネルギッシュになりモチベーションも上がる。
たとえば、自分の望みは、いつかこの部署のリーダーになり、同時に子どもの生活において最も重要な大人であり続けることだとわかっていれば、昼夜を問わず襲ってくるストレスや緊張をただ耐え忍ぶよりも、はるかに平常心を保つことができるだろう。
そのような「成功のイメージ」をいまは思い描けないかもしれない。しかし、心配はいらない。少し時間をかけて、自分が望む数年後のキャリアと家庭生活についてじっくりと考え、あなたが尊敬しているほかの働く親を観察してみよう。やがて、働く親としてのあなたの目標が、自然と形を成していくだろう。
4. 仕事を敵に仕立てる
息子がズーム会議の背景に乱入したり、上司からの急ぎのメッセージを読んでいる時にあなたの注目を引こうとしたりする。「いまはダメ。お父さんは仕事しているから」と、ついきつく言ってしまう。出勤しなければならない朝、子どもに「お母さんは今晩、夕食には間に合わないの」と深いため息混じりに言う。
新しい対応:子どもと仕事の話をする時はポジティブに。
仕事と家庭生活の責任は時に対立する。パンデミック下ではそうした対立がよく起こり、なす術もなかった。そのような時、敵視するかのような言葉を使って仕事のことを話してしまうのも無理はない。あなたも人間だ。上司のメッセージを読むのはストレスになるし、家族と夕食を一緒に食べられないと思えばがっかりもする。
だが、これを逆の立場で、子どもの視点から見てみよう。子どもたちはこの2~3年、間近であなたを見てきた。あなたが緊張したり失望したり、キレたりするのを目の当たりにしてきた。やがては大人になる彼らに、仕事やキャリアから連想してほしいのは、本当にこのような感情や態度だろうか。
ひたすら楽観的な言葉で仕事について語る必要はないが、少しばかり、台本に手を加えてみよう。「お母さんは仕事に行かなくちゃ」ではなく、「お母さんは仕事に行くね」と言ってみる。あるいは、最近の仕事での成果や、誇りを感じた瞬間、そもそも現在の業務分野や職務に引き込まれた理由などを話してみる。あなたが仕事に見出している素晴らしさや満足感を子どもに示せば、子どもも自分の将来を想像し始めることができるだろう。
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以上の項目を読んで、どれが心に響いただろうか。
あなたの考えを書き留め、パートナーや少数の信頼できる友人の意見を聞き、枠組みをさらに広げてほしい。
今後もずっと堅持したいパンデミック下の習慣は、ほかにあるだろうか。また、今日から方向転換すべき習慣はどれだろうか。直感を信じよう。あなたの人生であり、キャリアであり、家庭なのだ。何がうまくいくかは、あなた自身がわかっている。
何度も考え、練り上げていくうちに、新しい、あなた独自のプレーブックができあがるだろう。それは、危機の中で働く親として生き延びるためではなく、現在と未来において成長し続けるためのプレーブックなのである。
"Working Parents, It’s Time to Let Go of These Pandemic-Era Habits," HBR.org, May 11, 2023.